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西荻窪 : ロック的、あるいはカウンターカルチャー的フランス料理とワインを 「organ」

いま、メディアにひっぱりだこの紺野真さんのお店、西荻窪の「organ」を初訪問。

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人気なのは当たり前。ほんと、そういう感じ。

陳腐な言い回しだけど、旬なお店、ってこういうことだ。

店内は活気に満ちていて、お客もみんな楽しそうで、スタッフ志気抜群で、つまり、いわゆる<美味しい店オーラ>に満ちている。で、料理は実際に美味しく、しかも個性もあって、みんなが興味を持っている自然派ワインの品揃えと知識がバツグンで、かかっている音楽のセンスがよく、おいてある本のセンスがよく、店の外観も、内装もカッコイイ。

なのに、お洒落すぎず、キマりすぎてない。

おいてある本に関して言えば、ファイドンから出ているローズべーカリーの2冊がディスプレイしてあったり、最近アート好きのあいだで話題になっていたフランシス・ベーコン展の図録などさりげなく押さえてあるかと思えば、目の前にある文庫は、読み古したような石田衣良とか、新宿鮫、リングだったり(笑)。

つまり、適度にユルい。

居心地がよい。

値段も手ごろ。

どう考えても、流行るに決まっているのである。

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スタッフおすすめの白ワインとシードル。

イタリア・ヴェネト州、メンティの白ワイン。自然派ワインにはよくあるらしいけれど、微発泡している。酸に個性があるような感じがする。

そして、ノンルマンディーのフォール・マネルによる、なんと自然派のシードル“ARGILE”。オレンジ色に見えるほうのグラスがシードル。濃厚で、旨みがあるというか、味がしっかりしている感覚。

ちょっと話は飛ぶけれど、同級生の誘いで先日あるワイン会に参加した。日本ワイン会の重鎮であられる山本博先生が御出でになるような会で、場所は上野精養軒。それなりに楽しかったが、どちらかといえば、かなり保守的な感じの集まりだった。

そして、なぜか偶然そのとき持っていた本が紺野さんとアヒルストアの齊藤輝彦さんの共著『ウグイス アヒルのビオトーク~ヴァン・ナチュールを求めて~』だった(ウグイスは紺野さんの、もう一軒のお店の屋号)。帰りの山手線で読み始めたところ、次のような言葉に目がとまった。

自然派ワインはロックだ!

ヴァン・ナチュールのもつ、カウンターカルチャー的思想・・・


そうか。

ワインというのはヨーロッパにおいて、ある意味、かなり保守的な文化背景を持つわけだけれど、そういうフィールドには、必ずカウンターというものが生まれる。

つまり、まさに自然派ワインはワイン界のロックであり、カウンターカルチャーなのだ。

エチケットもクセのあるデザインが多いし。

ビオディナミって、シュタイナー農法なんだよね。

サブカルだ。

対抗文化だ。

オレは、ぜったいこっち派。

なーんて真に受けまくり、今後はヴァン・ナチュール派を自称することに決め、お店を初訪問、となったワケです。

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いろんな野菜にクスクスをまとわせたサラダ。

この日は入店したのが22時ちかくでけっこう遅く、切れてしまった野菜が多いとのことだった。これでもいつもより種類が少ないんだそうだ。

カレーのようなスパイスの風味が、うっすら後ろのほうで漂っていて、野菜をあれこれ食べるのが楽しい。

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仄かに柚子の風味がする鶏レバーのパテ。

たしかにレバーのパテだが、どっちかというとチョコのペーストを舐めているような嬉しさがこみ上げてくる。不思議。

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『ウグイス アヒルのビオトーク』にも載っているという、アルザスの自然派リースリング。

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鯛のポワレ。

下に茄子のキャビアと焦がしキャベツが敷いてある。上にはアンティボワーズ。横に添えてある白いクリームはとてもなめらかなカリフラワーのピュレ。

皿上の要素も多く、けっこうボリューミーに見えるのに、食べてみると味がすごく整理されていて、すっきりしてる。鯛はふんわりジューシーに優しく焼けていて、付けあわせも全部キャラが立っていて、なのに全体として混乱したところがない。

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赤ワインを頼んでいろいろスタッフに説明をうけたけれど、この頃かなり気分的にハイになってきていて、なんの件だったか連れと相当話しこんでいたため、残念ながら内容を忘れてしまった。うえのエチケットの写真を見て検索すれば絶対に思い出すので、これから復習します。

写真手前の2本をグラスでサーブしてもらった。うしろにある黒いエチケットのボトルは、手前のどっちかのワインを説明するための材料として、熱心なスタッフがわざわざテーブルまで持って来てくれた空瓶。

そのスタッフに「じつは紺野さんのファンで、御著書を持って来ているんですが…」と話したら、厨房の奥で料理と格闘していた御本人がわざわざテーブルまで来てくれたのだった。

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かつて紺野さんはLAでロックスターを夢見ていた。共著者であるアヒルストアの齊藤さんも昔バンドをやっていて渋谷系だったと、著書に書いてある。(よ)も、いわゆるバンド挫折組でシンパシー。なーんて流れで音楽の話になり、聞けば紺野さんのルーツはハードロックで、オジー・オズボーンがフェイバリットなんだとか。

あるとき、お店の優しいスタッフたちから紺野さんへサプライズなプレゼントがあったそうな。それは、オジーの来日公演のチケット。お店をやっていると、なかなかライブというものが自由に観られないそうだが、今回ばかりはスタッフからの心づくし。当日は安心してお店をお休みし、コンサートを楽しんできたのだという。いい話だ。

とは言え、紺野さんの音楽の趣味がロックだけにとどまらないのは、お店に来ればわかる。きっとジャズやラテンや、いろんな音楽が好きなんだろうな。

ちなみにこのおしゃべりのバックには、細野晴臣さんのいっこまえのソロアルバム『HoSoNoVa』が渋ーい感じで流れていて、自分はハードロックやヘヴィメタルも聴いてきたけれど本当はYMO育ちなんですよ、なんて思わずカミングアウトしてしまった。それにしても(よ)が大好きなこのアルバムが、どういうわけかジャストなタイミングでかかっている、この偶然。いや、もしかしてYMOの話をしたから、気をきかせてかけてくれたんだったか。そのあたり曖昧。ま、どっちにしても気分がいい。

『ウグイス アヒルのビオトーク』には紺野さんと齊藤さんが2人でギターを演奏している写真まで掲載されていて、ウグイスとアヒルだから「The Birds」(The Byrdsのもじり)だ!なんていう音楽好きならニヤリとするやりとりもあったのだけど、紺野さんがあの写真で演奏しているギターは、たぶんオベーションかな? と聞くと、そうそう、でもオベーションって実はあんまり好きじゃないんですよ、だって。

たしかにオベーションというギターは優等生のイメージで、天然で天才肌っぽく、かつ雑食性のように見受けられる紺野さんには似合わない気がする。

そうそう、上の写真。紺野さんのサインの形、フライングV型なのだ^^

なんてやっていたら、さすがにスタッフから声がかかる。

やっば。大忙しの紺野さんをあまりテーブルに引き留めてはいけない。

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岩井愛情豚の香草ロースト。

ゆっくり火を入れてあるようで、なんだかロゼ色のお肉の弾力がすごい。フォークとナイフで触っているだけで気持ちいいくらい。なまめかしくしっとりしているけれど、全然水っぽくない。

手前はクミンの香るキャロットラペ。下にはジャガイモのグラタン。

そして、写真ではお肉で隠れてしまっているけれど、皿の向こう端にはクスクスなんかに添える唐辛子ペーストのアリッサが添えられている。もちろん自家製。味も歯ざわりもやわらかく優しいお肉に、ちょっとエスニック風味が気のきいたアクセント。

自分もクスクスを作るとき、たまにオリーブ油とクミンとにんにくと粉唐辛子でアリッサもどきをでっちあげるが、こんなに美味しくない。このアリッサはすごく甘みがある。どうやって作るのか、またまた紺野さんに訊いてみた。

曰く、タマネギとか赤ピーマンとかが入るみたい。それで甘味が出ているわけだ。

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パイナップルのソテー、ココナッツアイスとリ・オレ添え。

リ・オレとパイナップルの組み合わせに惹かれたけれど、紺野さん曰く、けっこうある組み合わせだそうだ。パイナップルとココナッツミルクといえばピニャ・コラーダですよ、と紺野さん。根がアジアンな(よ)は、お米とココナッツミルクとフルーツ、という組み合わせでカオニャオ・マムワンやカオニャオ・トゥリアンを連想したり。

そんな話の流れで、紺野さん、今度はいろんな食材の話をしてくれる。最近、自宅でシトロンコンフィ(レモンの塩漬け)を作ってみたりしているが、それを言うと紺野さん、すこし砂糖を入れて甘くしてみてください、絶対美味しいんで、と教えてくれた。ぜひ、やってみよう。

おっと、まだまだキッチンでの仕事を残した紺野さんをあまり引き留めてはいけない。

さて、表4(ウグイスサイド)に紺野さんのサインをいただいた著書、こうなったら表1(アヒルサイド)にも齊藤さんのサインをいただかなければならないのだった。

楽しみだな~。

(よ)

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by brd | 2013-07-03 00:57 | 東京のフランス


旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks


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