広州 : 龍と虎と鳳凰のスープ
食在広東。
空飛ぶものは飛行機以外、四足のものはテーブル以外は、なんとやら。
かつて栄えた広東省広州市の清平市場をはじめて訪問したときは、心底驚き、中国の食文化のディープさワイルドさに目を見張った。
思いついたキャッチフレーズは、
食べるための、動物園。
犬、猫、狸、鹿、兎、ロバ、アルマジロ。雉、鶉、孔雀などの野鳥類。さらにスッポンやワニ、蛇、蠍、虫類などなどなど。
なんでもある。
思いつく生き物が、全部いる。
とくに野生動物のたぐいは、「野味」と呼ばれて珍重されていた。
「野味料理」の店は広州のそこかしこで営業していて、ホンモノの「狸そば」というものを食べてみたりした。ポン。
それがたしか、1998年か、99年あたりのこと。
ところが2000年代に入ると、ハクビシンからSARSが出たニュースやら、北京オリンピックとかの影響もあってか、市場での野味販売は大幅縮小。
動物パラダイスは失われてしまったのだろうか。
時代は変った。
なーんて思っていたら、広州在住の知人が「まだ全然あるよ」と、こんな写真を送ってきたのが2009年の春ごろ。
猫専門店。
おぉ・・・。
メニュー・・・。
名刺も。
さっそく実態調査のため、広州へ飛んだ。ニャー!
が!!!
タッチの差で(たぶん)、この「猫王食荘」は閉店。同所で店は営業しているものの、看板をかけ替え別の料理店になってしまったとの情報を得た。
残念。
おお、野味よ。
代わりに、というのもナンだが、広東スープを飲みに行った。
路上に面した庶民的なスープ専門店、「達楊原味燉品」。
どういうわけか、若い女性客が目立つ。
さまざま材料豊富なスープのエキスが、美容に良いとでもいうのか。
奥に見える、積み重ねられたアルミ製の蒸し器のなかに、一人前の小さなスープの器がたくさん詰め込まれている。
つまり、具とスープを入れた器ごと蒸し器に入れて調理する方式だ。
メニュー。
中国語に慣れないので、一個一個解読してから注文するのは骨が折れる作業だが、実はここで注文するものは、すでに決まっていた。
まずは、ここの定番。
ココナッツの烏骨鶏スープ。
ココナッツの実を器にしてあるのがなんとなくカワイイので、これが女性人気の秘訣か。
専用スタンドで立ててあるのが、また良い。
烏骨鶏のもみじ。
もったり甘いココナッツのジュース(ココナッツミルクではなく実の中に入っているココナッツウォーターのほう)で鶏を煮出してあるので、独特の風味がするが、これがクセになる美味さ。烏骨鶏の肉もけっこう入っている。
そして、もう一品。
実はこちらが、今回の本命。
燉龍虎鳳。
つまり、龍と虎と鳳凰のスープ。
めちゃくちゃ身体に良さそう!
・・・という問題ではなく、これはもう、一口飲めば永遠の命を授かることができる、魔法のスープに違いない。
龍と虎と鳳凰のエキスには、絶対そういう効果があるに決まっている。
いや、落ち着け。たった13元でそんな夢のスープにありつけるわけもないのである。
もちろん、龍と鳳凰は想像上の架空動物。
そして、虎はワシントン条約規制対象動物である。
からくりは、こうだ。
・龍=蛇
・虎=猫
・鳳凰=鶏
なーんだ。
と、一瞬思うのも束の間。
蛇と猫と鶏のスープでも、十分珍しいよ!
しかも、今回調査対象の猫が!!!
日本人の普通の感覚からしたら、かなりゲテモノめいてはいるのだが、じっさいスープはさらりと滋味深く、普通に美味しい。
猫は赤身で鶏や蛇よりも肉質はしっかりしている。さらにサトウキビやナツメ、クコの実などなどが複雑なニュアンスを与えていて、なかなか良い。
このお店、まだやっているのかなと思って検索したところ、こんな情報サイトにたどり着いた。
昨日(2013年3月31日)投稿されたばかりの情報もあって、いまだ盛況の様子。
<2009年5月>
(よ)
空飛ぶものは飛行機以外、四足のものはテーブル以外は、なんとやら。
かつて栄えた広東省広州市の清平市場をはじめて訪問したときは、心底驚き、中国の食文化のディープさワイルドさに目を見張った。
思いついたキャッチフレーズは、
食べるための、動物園。
犬、猫、狸、鹿、兎、ロバ、アルマジロ。雉、鶉、孔雀などの野鳥類。さらにスッポンやワニ、蛇、蠍、虫類などなどなど。
なんでもある。
思いつく生き物が、全部いる。
とくに野生動物のたぐいは、「野味」と呼ばれて珍重されていた。
「野味料理」の店は広州のそこかしこで営業していて、ホンモノの「狸そば」というものを食べてみたりした。ポン。
それがたしか、1998年か、99年あたりのこと。
ところが2000年代に入ると、ハクビシンからSARSが出たニュースやら、北京オリンピックとかの影響もあってか、市場での野味販売は大幅縮小。
動物パラダイスは失われてしまったのだろうか。
時代は変った。
なーんて思っていたら、広州在住の知人が「まだ全然あるよ」と、こんな写真を送ってきたのが2009年の春ごろ。
猫専門店。
おぉ・・・。
メニュー・・・。
名刺も。
さっそく実態調査のため、広州へ飛んだ。ニャー!
が!!!
タッチの差で(たぶん)、この「猫王食荘」は閉店。同所で店は営業しているものの、看板をかけ替え別の料理店になってしまったとの情報を得た。
残念。
おお、野味よ。
代わりに、というのもナンだが、広東スープを飲みに行った。
路上に面した庶民的なスープ専門店、「達楊原味燉品」。
どういうわけか、若い女性客が目立つ。
さまざま材料豊富なスープのエキスが、美容に良いとでもいうのか。
奥に見える、積み重ねられたアルミ製の蒸し器のなかに、一人前の小さなスープの器がたくさん詰め込まれている。
つまり、具とスープを入れた器ごと蒸し器に入れて調理する方式だ。
メニュー。
中国語に慣れないので、一個一個解読してから注文するのは骨が折れる作業だが、実はここで注文するものは、すでに決まっていた。
まずは、ここの定番。
ココナッツの烏骨鶏スープ。
ココナッツの実を器にしてあるのがなんとなくカワイイので、これが女性人気の秘訣か。
専用スタンドで立ててあるのが、また良い。
烏骨鶏のもみじ。
もったり甘いココナッツのジュース(ココナッツミルクではなく実の中に入っているココナッツウォーターのほう)で鶏を煮出してあるので、独特の風味がするが、これがクセになる美味さ。烏骨鶏の肉もけっこう入っている。
そして、もう一品。
実はこちらが、今回の本命。
燉龍虎鳳。
つまり、龍と虎と鳳凰のスープ。
めちゃくちゃ身体に良さそう!
・・・という問題ではなく、これはもう、一口飲めば永遠の命を授かることができる、魔法のスープに違いない。
龍と虎と鳳凰のエキスには、絶対そういう効果があるに決まっている。
いや、落ち着け。たった13元でそんな夢のスープにありつけるわけもないのである。
もちろん、龍と鳳凰は想像上の架空動物。
そして、虎はワシントン条約規制対象動物である。
からくりは、こうだ。
・龍=蛇
・虎=猫
・鳳凰=鶏
なーんだ。
と、一瞬思うのも束の間。
蛇と猫と鶏のスープでも、十分珍しいよ!
しかも、今回調査対象の猫が!!!
日本人の普通の感覚からしたら、かなりゲテモノめいてはいるのだが、じっさいスープはさらりと滋味深く、普通に美味しい。
猫は赤身で鶏や蛇よりも肉質はしっかりしている。さらにサトウキビやナツメ、クコの実などなどが複雑なニュアンスを与えていて、なかなか良い。
このお店、まだやっているのかなと思って検索したところ、こんな情報サイトにたどり着いた。
昨日(2013年3月31日)投稿されたばかりの情報もあって、いまだ盛況の様子。
<2009年5月>
(よ)
by brd
| 2013-04-01 04:08
| 中国
旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks
by brd
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