『料理通信』秋田発見ツアー その3 : 「たざわこ芸術村 温泉ゆぽぽ」の夕食
『料理通信』秋田発見ツアー、さらに前回のつづき。
本日の宿「たざわこ芸術村 温泉ゆぽぽ」に到着。部屋でひと休みしてから夕食の会場へ向うと、
なにやら奥のほうに人だかり。
人を集めていたのは、きれいな盛りつけのお皿ふたつ。
花輪のように美しく盛られているのは、なんと、がっこ(漬物)だった。
こんなにゴージャスなお漬物を見たのははじめて。
感嘆とともに、逆サイドからのアナザーカット。
これ、「ごっつお玉手箱列車」の漬物を作った佳子さんと、干し柿をつくったけい子さんの、「けいこコンビ」による作品なんだとか。大根各種、高菜、なす、ヤーコンなどが盛り合わせになって、さらに菊で飾られ色彩豊か。
サプライズな差し入れに一同感激。
各々取りわけて席で味わってよいのだが、この美しさを記録しておきたい気持ちから、そして美しい盛りつけを崩すのを躊躇する気持ちから写真を撮るばかりの一同。で、あらかた全員が撮影し終え、そろそろいいかな、というところでやっと漬物を取りわけ着席。けいこさんコンビも一緒に、夕食のスタート。
「冬紅葉」と題されたしながき。秋田の食材にちなんだ品々だそうだ。
しめじと菊のおひたし。上にちらしてあるとんぶりも秋田の名産。
もみじといちょうで色とりどりの前菜九品。
いちょうに隠れたあたりは見えないけれど、そこから時計回りに地柿の白和え、落葉パプリカ、いくら醤油漬、銀杏のほうば味噌焼き、山茸煮こごり、くるみとレーズンの入った鶏の松風焼き、月冠玉子、みずの実たまり漬け、そしてまんなかは本日再登場、西明寺栗の渋皮煮。晩秋の秋田なり。
東京ではあまり見かけないみずの実は、すこしぬめりがあって噛むとシャクシャクした独特の歯ごたえでクセになる。秋田をはじめ、東北が産地のよう。翌日に寄った道の駅でも生のみずの実が売られていた。
そうそう、この夕食のために特別に用意された秋田のお酒が五つ。
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)のSAKE部門にて「チャンピオン・サケ」を受賞したという「大吟醸 福小町」(湯沢市・木村酒造)、「純米吟醸 雪の茅舎」(由利本荘市・齋彌酒造店)、「秘伝山廃 雪の茅舎」(齋彌酒造店)、古酒の「山吹 ゴールド」(大仙市・金紋秋田酒造)。
以上を味くらべしながら、つぎの料理へ。
岩魚の田楽と本荘無花果の甘露煮。
秋田錦牛と山内芋のしぐれ煮。秋田のブランド牛と、横手市山内産の芋の子=里芋。
ここで突然、知らされていなかった飛び入り。
劇団わらび座による、民謡ショー!
わらび座は「たざわこ芸術村」内に「わらび劇場」をかまえ、ミュージカルから民謡までこなす多才な集団。
ショーのクライマックスは、バカ囃子。地元、角館のお祭で「曳山」と呼ばれる山車が路上で激しく衝突するときに奏でられるリズムの強烈なお囃子で、祭好きな(よ)はもう血が騒いでしょうがない。こんど角館のお祭、ぜひ見物しに行ってみたい。
さーて、一気に場があたたまったところで、さらに料理。
紅鱒のあらい。
からし酢味噌が合う。鮭かとおもったら、淡水の紅鱒なんだそうだ。帰ってからネットで調べると、田沢湖には淡水で紅鱒や岩魚を養殖しているところもある。そういった食材かどうか、詳しく訊ねるのを忘れてしまったけれど。
山なめこの稲庭うどん。
湯葉包み豆腐。地元の大豆使用。
神代産「山の芋」鍋。
山の芋だんごと、比内地鶏と地場野菜。山の芋=神代芋は、長芋とくらべて粘りが強く、つなぎなしでだんごになるとか。素朴な食感。
あきたこまち新米の舞茸ごはん。
大根のぶどう漬けと、いぶりがっこ。
じつは秋田から帰ってきてから毎日いぶりがっこを食べている。燻製の香りと小気味よい食感、はまる。
最後はビールのゼリーに生クリームと果物をのせたデザート。
2012WBA(ワールド・ビア・アワード)でワールド・ベスト・アルト・ビールに選出された、田沢湖ビール「アルト」のゼリーだそうで、今思えば「アルト」そのものを飲まなかったのが悔やまれる。
夕食に参加した「けいこコンビ」のうち、農家民宿「泰山堂」を営む藤井けい子さんとお話することができた。
あんなに美味しい漬物や干し柿を作るけい子さん、宿ではどんな料理を作っているのか訊ねると「無国籍勝手料理よ!」と即答。参加者に配られた秋田グリーン・ツーリズムのガイドブック『GREEN NOTE』に掲載された泰山堂のページを見せてくれた。素敵な囲炉裏のある部屋の写真の下に、アジアからの留学生たちが、けい子さん作の炒飯のようなご飯料理を食べている写真が。地場の食材をもとに、なんでも自由自在なんでしょうね~。
いい感じにテンションの上がった一同。シメの記念撮影は「ハイ、チーズ!」ではなく、どういうわけか「加トちゃん、ぺ!」がシャッターの合図に。
解散後、どうも飲み足りず、
館内のお食事どころ「ばっきゃ」で、ビール飲みくらべ。
さらに、日本酒飲みくらべ。
つまみにまた、がっこ。
同行の『料理通信』スタッフ、秋田県庁の方、旅行代理店の方をまじえ、またしてもどういうわけか「いなかっぺ大将」の話をしていたら(風大左衛門は秋田でなく青森出身)、じきにオーダーストップ。閉店。
そのあと温泉大浴場へ。一緒に湯につかる旅行代理店の人に、まったく知らなかった六郷の祭「竹うち」の話を聞く。自宅に戻って動画を見たけれど、こ、これはすごい。食とはまた別の角度から秋田に興味津々。
さらに、秋田は台風などの自然災害が少なく、米などの農作物もだいたい毎年たいらに採れるので、どっちかというとのんびりした県民性なんだというような話も。だから食文化のプロモートにも、これまではあんまり熱心ではなかったそうだが、もともとタイなんかのアジア好きな性分だし、のんびりした人たちと合う気がして、むしろ好感を抱いた。
広々とした風呂で、盛りだくさんな一日をふり返り、満足満足。
つづく。
<2012年11月>
(よ)
本日の宿「たざわこ芸術村 温泉ゆぽぽ」に到着。部屋でひと休みしてから夕食の会場へ向うと、
なにやら奥のほうに人だかり。
人を集めていたのは、きれいな盛りつけのお皿ふたつ。
花輪のように美しく盛られているのは、なんと、がっこ(漬物)だった。
こんなにゴージャスなお漬物を見たのははじめて。
感嘆とともに、逆サイドからのアナザーカット。
これ、「ごっつお玉手箱列車」の漬物を作った佳子さんと、干し柿をつくったけい子さんの、「けいこコンビ」による作品なんだとか。大根各種、高菜、なす、ヤーコンなどが盛り合わせになって、さらに菊で飾られ色彩豊か。
サプライズな差し入れに一同感激。
各々取りわけて席で味わってよいのだが、この美しさを記録しておきたい気持ちから、そして美しい盛りつけを崩すのを躊躇する気持ちから写真を撮るばかりの一同。で、あらかた全員が撮影し終え、そろそろいいかな、というところでやっと漬物を取りわけ着席。けいこさんコンビも一緒に、夕食のスタート。
「冬紅葉」と題されたしながき。秋田の食材にちなんだ品々だそうだ。
しめじと菊のおひたし。上にちらしてあるとんぶりも秋田の名産。
もみじといちょうで色とりどりの前菜九品。
いちょうに隠れたあたりは見えないけれど、そこから時計回りに地柿の白和え、落葉パプリカ、いくら醤油漬、銀杏のほうば味噌焼き、山茸煮こごり、くるみとレーズンの入った鶏の松風焼き、月冠玉子、みずの実たまり漬け、そしてまんなかは本日再登場、西明寺栗の渋皮煮。晩秋の秋田なり。
東京ではあまり見かけないみずの実は、すこしぬめりがあって噛むとシャクシャクした独特の歯ごたえでクセになる。秋田をはじめ、東北が産地のよう。翌日に寄った道の駅でも生のみずの実が売られていた。
そうそう、この夕食のために特別に用意された秋田のお酒が五つ。
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)のSAKE部門にて「チャンピオン・サケ」を受賞したという「大吟醸 福小町」(湯沢市・木村酒造)、「純米吟醸 雪の茅舎」(由利本荘市・齋彌酒造店)、「秘伝山廃 雪の茅舎」(齋彌酒造店)、古酒の「山吹 ゴールド」(大仙市・金紋秋田酒造)。
以上を味くらべしながら、つぎの料理へ。
岩魚の田楽と本荘無花果の甘露煮。
秋田錦牛と山内芋のしぐれ煮。秋田のブランド牛と、横手市山内産の芋の子=里芋。
ここで突然、知らされていなかった飛び入り。
劇団わらび座による、民謡ショー!
わらび座は「たざわこ芸術村」内に「わらび劇場」をかまえ、ミュージカルから民謡までこなす多才な集団。
ショーのクライマックスは、バカ囃子。地元、角館のお祭で「曳山」と呼ばれる山車が路上で激しく衝突するときに奏でられるリズムの強烈なお囃子で、祭好きな(よ)はもう血が騒いでしょうがない。こんど角館のお祭、ぜひ見物しに行ってみたい。
さーて、一気に場があたたまったところで、さらに料理。
紅鱒のあらい。
からし酢味噌が合う。鮭かとおもったら、淡水の紅鱒なんだそうだ。帰ってからネットで調べると、田沢湖には淡水で紅鱒や岩魚を養殖しているところもある。そういった食材かどうか、詳しく訊ねるのを忘れてしまったけれど。
山なめこの稲庭うどん。
湯葉包み豆腐。地元の大豆使用。
神代産「山の芋」鍋。
山の芋だんごと、比内地鶏と地場野菜。山の芋=神代芋は、長芋とくらべて粘りが強く、つなぎなしでだんごになるとか。素朴な食感。
あきたこまち新米の舞茸ごはん。
大根のぶどう漬けと、いぶりがっこ。
じつは秋田から帰ってきてから毎日いぶりがっこを食べている。燻製の香りと小気味よい食感、はまる。
最後はビールのゼリーに生クリームと果物をのせたデザート。
2012WBA(ワールド・ビア・アワード)でワールド・ベスト・アルト・ビールに選出された、田沢湖ビール「アルト」のゼリーだそうで、今思えば「アルト」そのものを飲まなかったのが悔やまれる。
夕食に参加した「けいこコンビ」のうち、農家民宿「泰山堂」を営む藤井けい子さんとお話することができた。
あんなに美味しい漬物や干し柿を作るけい子さん、宿ではどんな料理を作っているのか訊ねると「無国籍勝手料理よ!」と即答。参加者に配られた秋田グリーン・ツーリズムのガイドブック『GREEN NOTE』に掲載された泰山堂のページを見せてくれた。素敵な囲炉裏のある部屋の写真の下に、アジアからの留学生たちが、けい子さん作の炒飯のようなご飯料理を食べている写真が。地場の食材をもとに、なんでも自由自在なんでしょうね~。
いい感じにテンションの上がった一同。シメの記念撮影は「ハイ、チーズ!」ではなく、どういうわけか「加トちゃん、ぺ!」がシャッターの合図に。
解散後、どうも飲み足りず、
館内のお食事どころ「ばっきゃ」で、ビール飲みくらべ。
さらに、日本酒飲みくらべ。
つまみにまた、がっこ。
同行の『料理通信』スタッフ、秋田県庁の方、旅行代理店の方をまじえ、またしてもどういうわけか「いなかっぺ大将」の話をしていたら(風大左衛門は秋田でなく青森出身)、じきにオーダーストップ。閉店。
そのあと温泉大浴場へ。一緒に湯につかる旅行代理店の人に、まったく知らなかった六郷の祭「竹うち」の話を聞く。自宅に戻って動画を見たけれど、こ、これはすごい。食とはまた別の角度から秋田に興味津々。
さらに、秋田は台風などの自然災害が少なく、米などの農作物もだいたい毎年たいらに採れるので、どっちかというとのんびりした県民性なんだというような話も。だから食文化のプロモートにも、これまではあんまり熱心ではなかったそうだが、もともとタイなんかのアジア好きな性分だし、のんびりした人たちと合う気がして、むしろ好感を抱いた。
広々とした風呂で、盛りだくさんな一日をふり返り、満足満足。
つづく。
<2012年11月>
(よ)
by brd
| 2012-12-01 23:58
| 秋田
旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks
by brd
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