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金沢 : 寿司「小松弥助」の幸せと、寒ぶり大豊漁と、近江町市場

年始、北陸の親戚をたずねがてら、気になっていた店に。

金沢の寿司屋、『小松弥助』

以前、広州の美味を指南してくれた信頼するブロガーが絶賛していた。そして、あの「食べログ」の全国総合ランキング12位だ。

中国の美食を極める日本人が絶賛する寿司屋というのが、まず気になる。

とりたてて「食べログ」を信用するわけじゃあないけど、ミシュラン3つ星のフランス料理店などと並んでランキング上位に名を連ねる寿司屋が銀座じゃなく、金沢の店というのも気になる。

ためしに行きの新幹線で電話すると、2時30分からならカウンターに3名の空席あり。

参考までに書くと、当日は連休直前の平日。週末や休日なら当日の予約はムリだったかも。

場所は、金沢・片町商店街そば、犀川大通り沿いの「アパホテル」1階。

アパホテルには申し訳ないが、高級寿司店のイメージじゃない。実際現地に行っても「ここが?」という印象の外観。

すこし不安になりつつ暖簾をくぐると、ご主人らしきご年配の男性の真ん前に案内される。

まずビールを注文。

笑顔のご主人が「ひととおり握るから、足りなかったらあとで言って」と声をかけてくれ、席の雰囲気がぐっとなごんだ。

まず、イカ。

糸づくりにしたイカを白ゴマをふったシャリで握る。最後に塩をふる。

「これ、お醤油いらない」

「手で食べたほうがいい」

特徴ある優しげな口調で声をかけてくれるご主人。

口に入れると、寿司全体が、ほろりとほどける。

ものすごくふんわりやわらかく握ってある。

だから、箸はつかわないほうがいい。

塩とゴマで味を決めてあるから、もちろんお醤油はいらない。

万が一、それがわからないかもしれない初めてのお客のために、しっかり、かつ優しくアナウンスしてくれる。

なるべくベストな状態の寿司が、すべてのお客の口に入ってほしい。そうご主人が願っているからに違いない。

寿司屋にありがちな威圧感が生まれないよう、つとめている感じも伝わってくる。

優しいのだ。

もちろん、寿司はすごく美味しい。

一貫食べたところで、完全に弥助の世界。

さて。

そんなご主人のど真ん前だし、そもそも無粋だという思いから、この日は結局最後までデジカメを出さなかった。

食事しながら料理を撮るという行為についてや、それにまつわる飲食店の事情などに少々思うところあり、そのことについても書きたいが、また別の機会に。

とりあえず、寿司の画像が見たい人は、食べログのユーザー投稿画像を見てください。

そのあと続いて、炙りまぐろ、甘えび、白子すりながしのお椀、ばい貝など。

そういえば、まぐろにも、すだちを絞って塩をふってた。

けっこうな頻度で「お醤油いらない」がでる。

ところで、親戚のいる北陸には毎冬来ているが、いつだったかは暖冬で寒ブリが不漁で残念だった。

そんな話をカウンターでしていたら、

「ぶり、今年はすごくいいよ」

と教えてくれた。

その時点で、すでにご主人の手にはぶりが。

こんな一見の雑談に素早く呼応し寿司を握るなんて、なんてこと!

あぶらののりきった身が分厚く切られ、食べごたえがあり、味わいがいがある。

「これは本物のぶりだよ」

確かに。

あぁ、本物のぶり。

イメージ写真として、近江町市場の寒ぶり画像を。

金沢 : 寿司「小松弥助」の幸せと、寒ぶり大豊漁と、近江町市場_e0152073_46762.jpg


今年はほんとうに豊漁なんだ。

たくさん出ている。

石川産14kgで1本36000円。

氷見産13kgで1本32000円。

いずれもキロ3000円しない。となると、やっぱり安いようだ。

金沢 : 寿司「小松弥助」の幸せと、寒ぶり大豊漁と、近江町市場_e0152073_46714.jpg


こちらは小さめ。5kgのぶりがキロ1400円。

1本7000円。

手ごろだ。

1本仕入れるか。

とはいえ旅の身。買ってどうする?

友人か実家に送りつけ、あとからかけつけようか。

楽しい妄想は広がる。

翌日の『北国新聞』には、

金沢 : 寿司「小松弥助」の幸せと、寒ぶり大豊漁と、近江町市場_e0152073_461091.jpg


記録を塗りかえる大豊漁5834本の知らせが。

後日、さらに記録更新7891本報道

今年はすごい。

「弥助」に話をもどそう。

香箱蟹の軍艦も美味しかった。

身と味噌と子が一体となって、口内に蟹風味が広がる幸せ。

思わず顔をほころばせていると、

「ほーら、美味しい顔をしてるでしょう」

と、(よ)の連れたちに声をかけるご主人。

なんだか楽しいね~。

本気で美味しいものを食べさせようとしてくれてるんだなぁ。

うれしい。

香箱蟹もイメージ写真を。

金沢 : 寿司「小松弥助」の幸せと、寒ぶり大豊漁と、近江町市場_e0152073_461170.jpg


これも、近江町市場にて撮影。

さて。

「これは、この器と出会ってできた寿司」

と説明しながら出してくれたのは、づけ鮪+うに+とろろのミニ丼みたいなの。

いや、丼ではない。

ご主人が寿司というからには、寿司なのだ。

握らない寿司。

小さな底からラッパのように広がり口は広い乳白色の器。

なめらかな逆円錐形のようであり、よくみれば不定形な美しいシルエット。

この器の底のほうに鎮座する握らない寿司のたたずまいを目で愛でてから、舌で味わった。

ご主人、わざわざ器の作者の名前を伝えてくれたので必死に覚えようとしたが、ああ、味に気持ちが行き過ぎて結局失念してしまった。

最後はうなぎきゅうり手巻き。

ロースターでカリッカリ状態に焼けたうなぎをすばやく巻き、「熱い熱い」と注意をうながしながら手渡してくれる。

手巻きからのぞくうなぎの表面の脂がシュブジュブと泡立っているうちにガブリ。

うまいっ。

以上でひととおり終了。

追加で穴子の握り。塩ふって、柚子をけずる。

さらに、たれをぬった蒸しあわび。

味噌汁すする。

どうして、ほかのお客が頼んでいるねぎとろ巻きを頼まなかったか、今となっては後悔あとに立たず。

白髪ねぎとまぐろを一緒に叩いて、さっと巻く。

ご主人のその手仕事が、なんども目の前で繰り返されていたのに。

時間や連れの事情もあって、だったか?

燗酒がまわって心地よくなって、なにを考えていたか、今となっては定かでない。

そういえば、寿司はすべてご主人が握る。若いのは一度も握らない。

放心していると、ご主人が話しかけてくる。

どこから来たのか、そんな当たり前の話題から、某国政府要人がSPつきで来店したエピソードまでおよび、なんだか楽しい。

どこか別の場所に浮遊した気持ちで、まんまと店に荷物を忘れて、取りに帰った。

ああどうして、ねぎとろ、頼まなかったんだろう!

(よ)

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by brd | 2011-01-11 04:15 | 石川


旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks


by brd

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