カテゴリ:本や映画( 29 )

『Arche+』やっぱり夜遊びが好き!特集 & 要注目バンド「aire」日本ツアー!

タイの日本語フリーペーパー『Arche+』のVol.8が届いた!

特集は、

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やっぱり夜遊びが好き!

いつになく、夜、な表紙になっております。

本ブログのコメント欄でも軽く物議をかもしていた創刊号の特集「女の夜遊び特集」、その第2弾。

いちおう食ブログの【美味しい世界旅行】としては、壁一面グラフィティアートの店内でフォアグラ&帆立の握り寿司が食べられる「KINKI」なんて名のシンガポール系日本料理店や、タイ版「料理の鉄人」にも出演したペルー人シェフが日本食とペルー料理を融合させてスクンビット11の33階建てサービスアパートメント屋上で食べさせる「Above Eleven」などなどの掲載店も気になったりするわけではあるのだが、

やっぱり、特集の核はゴーゴーボーイ。

今回はバンコク在住のタイ人女子ナムさん、夜遊び魔女サマンサさん、おねえのmacoさん、編集長のちなみさん、以上4人のクロスレビュー的トークでソイ・トワイライト界隈をナビゲート。さらにベトナム出身のナンバーワンボーイ、ジョニーくん(20歳)の自宅に突撃取材!などなど、濃厚な内容となっております。

すでにバンコクではさまざま反響アリ、とか。(よ)なんかは「へー、ずいぶん●●●●●店も保守的なんだねぇ」なーんて感想ですけどね。ふふふ。

ほかには、「美食への招待状」のコーナーでカオチェーを特集。日本ではほとんどお目にかかることのない冷やし茶漬けのようなカオチェーは、ソンクラーン時期の風物料理。タイは味が強い料理が多いのに、氷水でごはんをさらさら食べるというのが、けっこう不思議な気がする。

そして。

ここからが本記事ふたつめのトピック。

本誌の音楽コラム連載「アンダーグラウンドで会いましょう」を担当しているGinnさんがドラムを叩くバンド「aire」(アイレ)が来日公演を催したので、新宿のライブハウス「MARZ」に観に行った。

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aireは日タイ混成メンバーにてバンコクをベースに活躍中。今回のステージには、音楽通の多くがリスペクトするバンド「ROVO」のエレクトリックバイオリン奏者、勝井祐二さんがゲスト参加した。

これは油断していた。

いや。

こんなにすごいものが観られるとは思っていなかったので、音楽好きでもある(よ)は心底ぶっ飛んでしまったのだ!

来る5月にファーストミニアルバム"inhale slowly, exhale shortly"(「ゆっくり吸って、みじかく吐く」?)がインディーレーベルからリリースされる若々しいバンドであるaireと、重鎮と呼んでも差し支えない勝井さんとの出会い。そして、aireの日本人メンバーにとっては初凱旋公演ともいえるまたとないシチュエーション。さらに、リラックスしつつ熱かったオーディエンスなどなど、さまざま要素の化学反応もあったのだが、やっぱりaireの音楽そのものがイイ。

音楽ジャンルとしては「ポストロック」と呼ばれたりする歌のないインストルメンタルロックなのだが(たとえばtoeなどが好きな人にはオススメ)、とても“歌ごころ”がある。インストになのに“歌ごころ”は矛盾しているかのようだけれど、バンドの音全体が本当に“歌っている”のだ。

勝井祐二さんの演奏は、もうゲストというよりaireのメンバーみたいだった。

このあたりのケミストリーにも、めちゃくちゃゾクゾクさせられるものがあった。

ROVOのファンにもオススメかも。

このライブで音楽脳が活性化してしまい、あんまり聴いてなかったCDなどを引っ張り出して聴いたりしている(よ)なのだ。

そうそう、『Arche+』の連載「アンダーグラウンドで会いましょう」はバンコクのFMラジオステーション「J-Channel」(FM93.75)の番組としても放送中(日曜19:05~20:00)。日本からもネットで聴けるそうです。

(よ)

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by brd | 2013-04-20 19:54 | 本や映画 | Comments(2)

タイ調味料で創作料理! 在タイ日本人女子フリペ『Arche+ アーチプラス』Vol.6 

(よ)が応援しているバンコクの女子フリペ『Arche+ アーチプラス』のVol.6の大特集は・・・、

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タイの調味料で創作料理!

チャオプラヤ川を眼前に望むバンコクはヤワラーの古民家リノベ猫カフェ「Samsara Cafe & Meal サムサラ・カフェ&ミール」のオーナー・要美由紀さん、バンコクで活躍中の野菜ソムリエ・田中瑞恵さん、来タイ12年のタレント/主婦の斉藤華乃さん、以上3名の在タイ日本人女子によるタイ調味料を使ったフュージョン料理レシピが満載。

さっそく掲載レシピを参考に、自分で作ってみることに。

まず、調味料を入手。

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手前から、エビを発酵させたペーストのガピ、日本の醤油に近いシーユーカオ、エビや唐辛子やガピやタマリンドなどをペーストにしたナムプリックパオ。

実は通勤電車を途中下車してすぐの場所にタイ食材専門店の「ASIA SUPER STORE アジア・スーパー・ストア」があるので、この種のモノの入手はラクチンなのだった。

お店にいたタイ人のおばさん(たぶん近所のタイ料理店の人)に、シーユーカオとシーユーダムの違いや、どれがガピか、など教えてもらいながらショッピング。

「奥さんタイ人?」と訊かれたので、「違うよー」と応えると、「ガピでなに作るの?」とたずねるので、「スパゲティ」と言ったら、「え~!?」って驚いていた(笑)。

まずは、サムサラの要美由紀さんのレシピ「プラータオウフー」を作ってみる。

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焼いた厚揚げに、ナムプリックパオのソース。

ソースはナムプリックパオに、ナンプラー、砂糖(掲載レシピのガムシロの代用)、レモン汁(掲載レシピのマナオ汁の代用)、パクチー、レモングラス、ホムデーン(タイ小タマネギ)、ねぎ。

レシピにあったパクチーファランは買うのを忘れたので省略。

薬味類はすべてみじん切りにする。

このソースが美味い!

甘辛酸っぱくて、レモングラスやパクチーの薬味類の香味が渾然一体。

厚揚げに合う。

ちょこんと上品な感じで厚揚げのうえに乗せたソースだが、結局うえの写真を撮ったあと、厚揚げを細かく切りわけてソースを増量、混ぜ混ぜしてヤム状態にして食べた。そんな感じの一品。

お次は、おなじく要さんのレシピで「焼き野菜のサラダ」。

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台所にあった野菜を適当に集めてグリル(使用野菜は掲載レシピとはかなり違う)。

ドレッシングはシーユーカオ、オリーブオイル、酢(掲載レシピではワインビネガーとなっているが千鳥酢で代用)、にんにくとホムデーンのみじん切り、こしょう。レシピにあったマナオ汁は省略。

Arche+の料理写真では野菜とドレッシングを別々にサーブしてあったが、先に和えてから盛り付けた。

これもドレッシングがなかなか。

よくフツーに醤油ドレッシングを作るけど、それに近い感じ。

ところで「サムサラ」は、『Arche+』の創刊準備号の表紙に登場した旅ライターのとまこさん強力プッシュにより、去年の9月に行ってきた。

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すごくムードのあるロケーションで、インテリアもかっこいい。

『Arche+』も置いてある(笑)。

そして、猫カフェでもある。

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サムサラにいた、壺ネコ。

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店のすぐ外にも、美形ネコたちがわらわらと。

さて。

シメは斉藤華乃さんの、「ガピクリームパスタ」。

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生クリームを温めながらガピを溶かして、少しナンプラーも足して味を見つつ、茹で上がったスパゲティとあえて、ガパオ(掲載レシピではバジルまたは大葉とあったがアジアスーパーストアで買っちゃったので使ってみた)をあしらう。

簡単。

この一品、『Arche+』のデザイナーさんもお気に入りで、「たらこスパゲティみたいで美味しいです~」と勧められたが、本当にたらスパみたい。

ガピの発酵臭さが苦手な人もいるかもしれないが、これは多分、そんなに気にならないんじゃないかな。

クリームに、たとえば海苔をぐしゃぐしゃっと砕いて投入して「海苔クリームパスタ」なんて簡単メニューを作ることがあるけど、これも美味い。クリーム+海産物系のパスタソースは、いろいろ研究してみる価値アリ。

なかなか良いぞ、タイ調味料の創作レシピ。

さて。

話はかわって、今号で紹介されているニューオープンしたバンコクの洋食レストラン「SHIO」が、すごく気になる。

日本の服部栄養専門学校に留学したタイ人女性がオーナーシェフの、日本風洋食レストラン。

目玉焼きが乗ったハンバーグや、マカロニグラタン、カニクリームコロッケ、ロールキャベツ、ナポリタン、ハヤシライス・・・なんていう我々にはおなじみの料理がモダンかつコージーなダイニングで供される。

この内容で、シェフはかわいいタイ人女性。

バンコクもここまで来たかーと思わせる店でした。

行ってみたい。

さらに話かわって、タイサブカル好きな(よ)としては常に気になるタイのインディーズ系音楽の連載「アンダーグラウンドで会いましょう」。今号で紹介されていた、インストルメンタルロックバンド「popdub」が良かった。

これとか。

バンド名「popdub」の文字列がかわいい。

popというより、dubというより、むしろポストロックっぽいのだろうか。

ぜひアルバムを聴いてみたい。

というわけで『Arche+』次号はチェンマイ特集です!

<2013年2月>

(よ)

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by brd | 2013-02-18 03:14 | 本や映画 | Comments(4)

在タイ女子向け日本語フリペ『Arche+ アーチプラス』Vol.3 ~カンボジア・シェムリアップおしゃれ旅~

"Arche+ Vol.3" was issued. This issue features "Let's go a relaxing and fancy trip to Siem Reap”  Siem Reap, Cambodia used to be a Mecca for backpackers. But, according to the magazine, as a result of rapid development, we can now choose stylish design hotels, restaurants, cafes, fashion boutiques, general stores, and spas from several options.. [November, 2012]

毎号紹介している在タイ女子向け日本語フリペ『Arche+ アーチプラス』のVol.3が届いた。

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特集
Arche+的アンコールワットへの旅
シェムリアップ
のんびりおしゃれ旅


カンボジアのシェムリアップは、アンコールワット観光の起点となる街で、いまや首都プノンペンより注目されていると言ってもいい。

特集では、デザインのかっこいいブティックホテルをはじめ、レストラン、カフェ、雑貨やお土産のショップ、スパやマッサージを何軒も紹介。

ひと昔前なら、どちらかというと物好きなバックパッカーや、世界遺産大好きのマニアな旅行者が多そうなシェムリアップだったけど、現在はオシャレ女子が「どのホテルがステキかな、どのレストランが雰囲気いいかな」と選べるまでに急速な発展を遂げているのだとか。

しかもバンコクからなら、さくっと1時間で飛べる。実にうらやましい!

(よ)はかれこれ十数年前に行ったきりだから、興味津々。

特集記事で紹介されている店で個人的に気になったのは、“モダン・クメール料理”の「The Square24 スクエア24」

クメール料理とは要するにカンボジア料理のこと。近いうちカンボジアで伝統的なクメール料理をしっかり味わってみたいと願っている(よ)だが、こういうモダン系にも目がない。しかも、好みの肉、魚、野菜を選んで料理してもらえる「クリエイティブ」というメニューがあるんだとか。面白そうだ。ぜひ訪問してみたい気がする。

シェムリアップおすすめスポットの紹介者として名を連ねているカンボジアの日本語フリペ『クロマーマガジン』も、ぜひ読んでみたいと思った。

『クロマーマガジン』の執筆者のひとりにクーロン黒沢さんの名前があるけど、昔からファンだし原稿を受取ったりしたこともあったなぁ。ある意味、カンボジアの変化を感じさせる名前だ。個人的に、ではあるけれど。

シェムリアップ、日本のみなさんもぜひ。・・・と言うほど日本からは気軽に行けないかもしれないけど、タイ旅行にからめてアンコールワットまで足を延ばすなんてのは全然アリだ。ぜひぜひ。

さて。

第2特集。

バンコクの「コンセプトレストラン」で紹介されていた“監獄レストラン”「THE ROCK」が笑ってしまった。

客は囚人として監獄にぶち込まれる設定(笑)。「大量殺人のカレー」という物騒な名前のカレーや、しびんでサーブされるビール、タレが注射器に入った餃子、などなどメニューもムードたっぷり。囚人たちのための更生メニューはタイ料理と日本料理だそうだ。こういうコンセプトレストランは東京でも珍しくはないけれど、個人的にはめったに行かない。でも、バンコクなら行ってみようかなという気になったりして。

そして。

毎号気になる音楽コラム「アンダーグラウンドで会いましょう」は、80'sっぽいロックバンド「WORLD NOT BAD」を紹介。初期のトーキングヘッズやXTCっぽいような80年代のパンク・ニューウェーブな感覚、かつイキのいい若い音。

まったく話はそれるが、タイにおいてニューウェーブ&80'sなイメージというと、個人的にはFutonというバンドを思い出す。解散しちゃったのかな? かなりファンだった。横浜で野宮真貴さんがゲストに来たステージを観たけれど、かっこよかったなあ。

本筋とはまったく関係ないところで、いろいろ昔の個人的なアレコレを思い出した『Arche+』Vol.3でした!

(よ)

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by brd | 2012-11-16 23:20 | 本や映画 | Comments(2)

東京カリ~番長 水野仁輔×「料理通信」 夜中のトークショー

Attended the talk show of Mizuno Jinsuke, an Indian cuisine specialist, held at the Tsutaya book store, Daikanyama, Tokyo by "Ryoritsushin", a monthly magazine specialized in food. The event started late in the night from 22:00 P.M., probably reflecting the feature article of the new issue titled "Midnight Kitchen" featuring a curry recipe he recommends to cook at midnight.. [November, 2012]


『料理通信』 2012年12月号。

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第二特集は、真夜中のキッチン晩秋編。

本特集で「赤ワインでじっくり煮込む牛肉カレー」を担当した水野仁輔さん(東京カリ~番長)のトークショーが、本誌発売日の11月6日に代官山蔦屋書店で行われた。

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題して、

東京カリ~番長 水野仁輔氏×「料理通信」
夜中のトークショー


なんとイベント開始が夜の10時。

仕事を終えて食事してから、あるいは、かるく一杯やってからでも来れる大人の時間帯。

なんとなくリラックスした感覚。

終電が気になるけど(笑)。

トークの相方は「料理通信」副編集長の伊東由美子さん。

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もともとクラブのイベントでカレーを出していた目標も計画性もない軟派な集まりが「東京カリ~番長」。一方、マジメにインド料理を探究するために日本インド料理界のサラブレット3人と組んだ硬派ユニットが「東京スパイス番長」、などなど自己紹介めいた内容からスタート。・・・したかと思えば、流れるようにスムースな水野さんのトークはいつのまにやら仕事の本質、いや人生の本質を突くアフォリズムへといたる。

「今夜は料理関係の仕事に就くオーディエンスも少なくないので、ぜひなにかアドバイスを」

という司会者の質問に投げ返されたのが、ずばり、

水野仁輔 3カ条

その1.誰もやっていないことをやる

その2.自分が面白いと思うものを表現=アウトプットしていく

その3.決してやめずに継続する


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その1に関して、水野さんはカレーに関する仕事しか受けないと決めているそうだ。パスタのレシピ依頼とか、カレー以外の仕事がたくさん舞い込んだ時期もあったが、全部ことわってきた。

そして、現在はカレーとワインの関係を突きつめるため、酒はワインしか飲まないとかたくなに決めているという。

ワインは、まったくのビギナーだとか。

たとえば居酒屋で全員生ビールで乾杯、というときも一人だけワインと決めている。

しかも、できればフランスワイン。

フランスワインだけ、と狭く限定することで、なぜかだんだん楽しくなってくるんだそうな。あえてフィールドを限定することによって見えやすくなることも、確かにあるかもしれない。

ところで、水野さんはビジュアルの記憶力に優れている。

飲んだワインのエチケットは全部集めている。

ワインの名前や生産者は覚えられなくても、エチケットのデザインは忘れない。店でリストを見てピンと来ない場合は、ボトルさえ持ってきてもらえば、飲んだことのあるワインかどうか判断できる。だから、店では必ずボトルを見せてもらう。

DJをやっていたときにアナログディスクのジャケットを見ただけでサウンドが頭に浮かぶ、その感覚と同じだそうだ。

そうそう、会場では「料理通信」の編集部からワインがふるまわれた。

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日本産の甲州、マスカットベリーAの赤とロゼ、ブルゴーニュの赤。

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ひとときワインでなごんだ。

ワインスクールに行ったら負け。という話もおもしろかった。

水野さんのワインは自己流。

でも、誰もがワインスクールを勧める。スクールのメリットは、個人でボトルを購入せずとも数多くのワインがテイスティングできる効率の良さだ。

でも、効率って何?

気に入らなかったワインも一度抜栓したら自分で全部飲みきらなきゃいけない。もちろん、そのボトルは「美味いかな、どうかな」と案じながら身銭を切って購入した一本。そんな、みずからの身を切ってやる感覚がなくて、いったい何が身に着くというのか? と昔気質な職人のようなことを言う水野さん。そのルックスの爽やかさ、トークのスムースさと相反する、頑固なこだわりに魅力を感じた。

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さて、誰もやっていないことをやるためには、みんながすでにやっていることを知らなければならない。だから、日々出版されるインド料理の本、カレーの本は、ほぼすべてを購入している。

料理関係で共通して売れているのは、レシピ本だ。でも、水野さんの出版のアイデアはレシピ本にとどまらない。

ここで生まれる疑問。

おもしろいから、売れるのか?

売れている本=おもしろい本か?

自分がおもしろいと思うのに、売れない本は、実はおもしろくないのか?

そこで、三カ条の2.である。

自分が面白いと思うものをアウトプットする。

基本的に商業出版社では、売れない本は出せない。

でも、出版社が出してくれない企画をあきらめて、いいのか?

いいわけがない。

だから、自分で出す。

自分がおもしろいと思う企画は、出版社が出してくれなくても、必ず世に出す。

そこで立ち上げたのが、ご自身の出版社「イートミー出版」だそうだ。

どんな本を出しているかは、上のリンクを見ていただくとして、トークショーで配られたフライヤーに「今後刊行予定のタイトル続々」という欄がある。

そこには、『本物よりおいしい偽者レシピ』『老舗カレー店をめぐる冒険』『カレーよ、さようなら』『オニオンカラーチャート』『勝手にご当地カレー』『フランスワインとインド料理』『WHOLE CURRY CATALOG』『カレー遺産』『タモさんカレーの謎』・・・などなどなど、ざっと20冊以上の未刊行本の企画が並んでいる。とてもおもしろい。

全部本気か。一部ジョークか。いやたぶん、全部本気の企画なんだと思う。そして、きっとすべて刊行されるのだろう。全部、読みたいし。

イートミー出版の刊行予定企画タイトルを見て、ふと思い出したのは、かつて坂本龍一さんが本本堂という出版社をやっていたときに出した、『本本堂未刊行図書目録』。

一瞬、高尚なギャグなのかなとも思ったが、そういうことではなく、これは本と出版システムへの挑発・挑戦だったのであり、そういう意味では、なにか近しいものを感じてしまった。

おもしろいかおもしろくないかは、自分で決めればいい。

おもしろくないとジャッジされたことでも、10年続けていたらおもしろくなるかもしれない。

カッコイイね~。

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でも商業出版だって、もちろん捨てたものじゃない。

こっからは水野さんの話ではなく、ボクの個人的な見解。

10年前くらいにBSE問題が発生したときに、現在『料理通信』編集長の君島佐和子さんがやっていた当時の『料理王国』は、あえて「牛肉、食べてますか」という特集を組んだ。

どこの世界でもネガティブな話題や、あまりにもシリアスなテーマは避けるもの。それこそ、売れないから。でも、あえて食の世界が直面している大問題に真正面から挑んだその気骨に、なんだか惚れてしまった。

ながらく『料理通信』を愛読している、理由のひとつでもある。

こういう話、書いているときりがない。

個人的な見解、終了。

さて。

また水野さんの話に戻ります。

カレーの決め手はスパイスの配合、と思われているけれど、実はそうではない。

水野さんのたどり着いた結論は、脱水。

つまり、カレーを美味しくするか否かは火入れのテクニックがものを言うのだ。いかに食材を脱水するか、火によって水分をとばしていくかにかかっている。そんなテーマも興味深かった。

なんと、この水野説とまったくおなじことを『料理通信』2010年7月号「たとえば、落合さんのレシピは、???が違う!」特集で、落合務シェフが言っていたのだった。

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表1の「???」には、「水分の飛ばし方」が入る。

カレーにおいて自身が独自にたどり着いた結論と、イタリアンのスターシェフが同じことを言っているわけで、これを読んだときは心底驚いたという水野さん。

さらに、火入れの達人として話題にのぼっていたインド料理人が、西新宿「コチンニヴァース」のシェフ。たしかに、真夏なんて汗ダックダクで鍋を振っているシェフの姿を見た覚えがある。

さらに、この夜は気になるトピックがいっぱい。

たとえば、「東京スパイス番長」が行っているインド探求ツアーでは、近々インド・ベンガル地方を訪れる予定だそうだ。そのツアーでは、みんなで魚を釣って料理する計画があり、水野さんは会場の代官山蔦屋で参考図書として開高健の「オーパ!」ヴィンテージ本を購入したんだとか。そんなちょっとイイ話や、真夜中のキッチンで水野さんはグールドのバッハを聴いている、とか、語りたい話はまだまだあるのだが、いつもの記事よりだいぶ文章量が増えてきたので、このへんで。

そうだ、三カ条の3。

続けてさえいれば賛同者が生まれ、出会いがあり、かならず世界が広がっていく。

むしろ、おもしろいことはやめられない。

カレーは、おもしろい。

水野さん、『料理通信』スタッフのみなさん、楽しい夜中のトークショーをありがとう!

<2012年11月>

(よ)

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by brd | 2012-11-11 00:00 | 本や映画 | Comments(0)

在タイ女子向け日本語フリペ「Arche+ アーチプラス」のVol.2は・・・泥棒特集!?

Received "Arche+ Vol.2," a free journal for Japanese girls living in Bangkok. This issue features "how to protect against theft" because their office was robbed a few months ago and they came up with an idea that it would be a fool not to take advantage of this experience for their magazines. The result is detailed and really useful article about a protection against theft that Japanese people living in BKK must check.. [October, 2012]


応援している在バンコク女子向け日本語フリーペーパー

「Arche+ アーチプラス」

が届いた。

今回、創刊第2号。

前回創刊号は「女の夜遊び」なる若干刺激が強めの特集で、本ブログコメント欄でもかるく物議をかもしていたけれど(笑)、今回もまたまた独特編集方針。ただし、まったく別の方向性で。

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緊急特集
泥棒被害から身を守る!


な、な、なんと!

バンコクにある「Arche+」編集部に空き巣が入ったんだそうな。

しかし、転んでもタダでは起きない編集部の面々。この空き巣体験をもとにして本特集を編むことに。

編集部の空き巣被害実録ルポから、ホームセキュリティの導入法、スリや引ったくりなど広い意味での泥棒被害対策、泥棒体験と泥棒対策について在タイ日本人それぞれのケース、防犯グッズカタログ・・・などなど。

防犯上の不安は大都市に暮らす外国人共通の悩み。在タイ日本人も、もちろん。さらに女性なら、なおさら。みずからの体験をベースにして、そんな悩みに素直に応えた編集部に拍手。

創刊号、2号ともに独特編集で快走中!という感じ。

さて、そのほかのページで目にとまったのは、

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牡蠣特集。

バンコクにもアメリカ、フランス、そして日本など海外からの新鮮な生牡蠣を提供する、しゃれたオイスターバーがオープン。一方で、タイの大衆的な牡蠣料理「オースワン」や「ホイトート」も健在。

牡蠣とムール貝をミックスしたホイトート「ホイタップホイ」は、今度食べてみたいなあ。

そのほか、ヨガインストラクターの川畑友季湖さんの連載「サマディーへの道」でマクロビオティックを話題にしているのも気になった。マクロビオティックの始祖は桜沢如一という日本人。そんな、みんな意外と忘れている事実から、米など穀類のでんぷん質と人間の大脳の発達の関連について、などなど。本連載、少ない文字数ながら、創刊号からもろもろの示唆に富んでいて面白い。

さらに、音楽コラム「アンダーグラウンドで会いましょう」で紹介されている、



タイ・シューゲーザー・エレクトロニカ・ポップなバンド「Neuter Lover」も気に入った。

「Arche+ アーチプラス」Vol.2 タイ在住のみなさんは、ぜひ。

日本のみなさんは、手にとる機会がないかもしれないけれど、次号のVol.3は、11月25日に東京・有楽町で開催のタイ料理イベント「Yum! Yam! SOUL SOUP KITCHEN ヤム!ヤム!ソウルスープキッチン 秋田ver.」で配布予定。

いらっしゃるみなさんは、ぜひ。

Vol.3は、カンボジア・シェムリアップ特集!(予定)

ミャンマー、ラオス、そしてカンボジアは、タイ周辺国の注目株。急ピッチで近代化が進んで、観光や投資や日本人の進出などなど、目新しいモノ、コトがいっぱい。すでに編集部はシェムリアップ取材を終えたとの情報。

楽しみ。

(よ)

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by brd | 2012-10-31 23:34 | 本や映画 | Comments(0)

バンコク女子必読フリペ「Arche+ アーチプラス」創刊号!

Friends of mine in Bangkok launched a free journal, "Arche+," for girls speaking Japanese. I love the unique sense of editors challenging to introduce a bit taboo theme like Go Go boys.. [September, 2012]


友だちがタイ・バンコクで創刊した日本語フリーペーパーの紹介です。

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「Arche+ アーチプラス」

タイトルキャッチは、「アジアに生きる女性をつなぐフリースタイルマガジン」。

もしかすると、そろそろ2号が出ちゃってるかもしれないけれど、まずは、ざっと創刊号の内容を紹介。

まず、大特集は「女の夜遊び」!

ナイトショッピングスポットにおしゃれ系ワインバー。音楽好きにはクラブや、ライブハウス、さらにはタイインディーズミュージックシーンの紹介。そして目玉は、魅惑のホストクラブにゴーゴーボーイ・・・。

かなりディープに攻めてます。

グルメ関係は、東京でも流行っているパン。バンコクでもかなりの数のベーカリーがオープンしていて、ベスト9ショップを紹介。

連載関係は、Yahoo占いで1位獲得の「万象運命術」創始者みさと道心さんが占うコーナー、ヨガインストラクター川畑友季湖さんのヨガコラム「サマディーへの道」、バンコクのビューティースポット紹介「美女への処方箋」、タイインディーズミュージックシーン紹介「アンダーグラウンドで会いましょう」、タイ在住の日本人女性の暮らしぶりを紹介する「十人十色のタイ暮らし」、メイドさん相手のタイ語講座「家の中で使うお役立ちタイ語」、在タイ女子向けマネー講座「将来絶対トクをする!賢い女になるためのプチ経済講座」、タイを拠点にモデル活動を行うAKIKOさんや、スタイリストのバーバラさんのコラムなどなど・・・・。

いま、タイで発行されている日本語フリーペーパーは20誌以上とのこと。

そのなかにあって、きっとこの「アーチプラス」はその抜きん出る個性をこれからガンガン発揮してくれることでしょう。在タイ日本人女性の本音ニーズをバッチリ満たすフリースタイルマガジンに育ってほしいです。

個人的には誌面にちらりとのぞくディープなテイストに共感。

スクンビットにあるプリンの美味しいスイーツ専門店の紹介と一緒に、ROVOのエレクトリックバイオリニスト勝井祐二さんの来タイ公演情報が掲載されてたりする情報欄を見ると、なんだかまたバンコクに遊びに行きたくなるな~。

期待です!

バンコクで手にとる機会があれば、ぜひ。

(よ)

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by brd | 2012-10-02 23:30 | 本や映画 | Comments(5)

【Arche+】バンコク女子のフリペ創刊おめでとう! ロータス&フラワーズ・ワンで打ち上げ

バンコクの女子力抜群フリーペーパー。

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Arche+

創刊0号がリリース!

タイトルの読みかたは、「アーチプラス」。

友だちが創刊にたずさわっており、東京での打ち上げに同席。

タイと日本、バンコクと東京のカルチャー、タイ在住の日本人女性たち、日本人女性とタイ人女性…などなどなど、アジアに生きる女性たちをテーマに、いろんなモノ・コト・ヒトをアーチの架け橋でつなぐフリースタイルマガジン。

表紙には「たびふぇち」な、おしゃれパッカー部長 とまこさん。

創刊0号では、とまこさんによるバンコクの中華街、ヤワラーのリポートが掲載。

あと、彼女いわく、創刊0号に紹介されているバンコクのカフェ、

Samsara cafe & meal

は、とまこさん的に世界最高の空間!とか。

バンコクの下町、ワット・パトゥム・コンカの隣で、チャオプラヤ川沿いだそうな。お店のページが見つからなかったので、タイ人ブロガーのリンクを。

お店には猫も、たくさんいるらしい。

行ってみたい!

さて。

打ち上げ会場は、東高円寺のオーガニック・ベジタリアン・レストランの「ロータス&フラワーズ・ワン」。

以下、みんなで食べたもの。

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アロエとオレンジのカルパッチョ

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かぼちゃの香草バターオーブン焼き

お酒は、

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サヴニエール・ロッシュ・オー・モワンヌ 1998

酸味が少なく、まあるくまったりしたミネラリーな珍しい味わい。10年以上前のヴィンテージ。

さらに、

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丸ズッキーニのベシャメルグラタン

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トロ茄子のステーキ

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トマトと焼き茄子のフェデリーニ

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大豆ハム柚子胡椒ステーキのスパゲティーニ

ところで、

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天然酵母パンも、ふわふわで味があって美味い。

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玄米ごはんも、つぶつぶした歯ごたえで美味しい。

塩など入れてないそうなのに、すごく味がガツンと来る。圧力鍋で炊いているんだって。

メイン的な感じで、

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大豆ハムのサイコロステーキとアボカドのタルタル

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ベジハンバーグ ほうれん草のクリームソース

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デザート盛り合わせ

…などなど。

お皿いっこいっこにコメントしていくと、もう長くなりすぎちゃうので、あっさり行きますが、うん満足満足。

ここ、オーガニック&ベジタリアンの淡いイメージを良い意味で裏切るしっかりした味付けで、食べ応えがあってとても美味しい。

前よりさらに料理が丁寧に、美味しくなっている。

もどき肉類は中国系の素食のように、もうすこし歯ごたえがあれば、かなり本物の肉に迫れる気もするが、似せることが目的ではないと思うので、このままでもいいような気がする。

素食といえば、ひさしぶりに来たら台湾の人がサービスをやっていて、もちろん台湾の素食にも詳しくて、接客もとてもていねいで、いろいろ話を聞かせてもらった。

いい打ち上げになって、よかった。

Arche+の前途を祝して、乾杯!

(よ)

2012年8月

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by brd | 2012-08-05 15:57 | 本や映画 | Comments(6)

ラジニとカラバオ

ついつい忙しさにかまけ、ずいぶん記事をあげてなかった感じです。ごぶさたしています。

今回は、この週末都内をぶらぶらした成果をふたつ。

いっこめは、待ちに待った映画のハナシ。

一昨年、南インド行ったときに地元のテレビでトレーラー見て、大ショック&大爆笑!

これ絶対観たい!!!

と願っていた作品が、とうとう、ついに、日本公開。



ラジニ・カーント主演
『ロボット』

ひとことで言えば、

踊るマハラジャ+マトリックス+ターミネーター。

とはいうものの。

もうこれはタミル映画がハリウッドをパクってる、とか、そういう次元では、もはや全然ない。

このトゥーマッチなヤリすぎ感は、いったいなんだ?

だいたい、スーパースター・ラジニ・カーントがあんないっぱいに増殖して、さらには全員くっついて球体を形成し、どういうわけかゴロゴロころがりながら攻撃してきたりしますか、普通(笑)。

くどくど説明するより、トレーラーを観たほうがイイと思うので、インド版のも貼っておきます。



ヤバいですね。

しかし。

たぶん日本版は編集されて短くなっちゃってる気がする(間違ってたらすいません)。おそらくインド版は3時間くらいで休憩つき。インド版トレーラーにあるダンスシーンが日本版になかったりするからなー。ケチらないで全部見せて欲しいよなー。ノーカット版乞う。

インドの坂本龍一、A・R・ラフマーンの音楽もイイ。ボリウッド風味を基本に置きつつテクノなテイストもがっつりミックスしててお見事。口タブラ+ヘビメタなんて、かなりかっちょいい。

ぜひ。

で、ふたつめは、恒例のタイフェス。

前情報なくフラっと来たら、ステージにはタイロック界の重鎮中の重鎮、カラバオが。

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正直、カラバオってあまり真剣に聴いたことなかったけど、うわー、これオーディエンスの盛り上がりが尋常じゃない。

MCぜんぶタイ語なのに、嵐のようなレスポンス。

盛り上がってるの全員タイ人か。

誰かが、

酒もガンガン飲んでてカラバオのフリーコンサートなんて状況タイじゃ超危険。

みたいに言ってたけど、今でもそんな影響力あるのかな。あるのかもしれないなあ。

ところでタイフェス、二日で40万人動員だって。すごい。

両日とも晴れてよかったね。

ともあれ、インド&タイ、いいもの見させてもらいました。

(よ)

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by brd | 2012-05-14 00:32 | 本や映画 | Comments(4)

エル・ブリの秘密~世界一予約のとれないレストラン~ EL BULLI - Cooking in Progress

あけましておめでとうございます。

正月から鏡餅ならぬ画餅充飢と言いますか、行けもしないレストランのドキュメント映画を観てきました。

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『エル・ブリの秘密 ~世界一予約のとれないレストラン~』
“EL BULLI - Cooking in Progress”


EL BULLIは、スペインのバルセロナから車で2時間くらいのところにある、世界でもっともクリエイティブで人気のあるレストラン。でも、去年惜しまれつつ閉店。二度と行くことができなくなり、映画を観てどんなに涎をたらしても、まさに絵に書いた餅というわけです。

実は2002年だったか03年だったか、スペイン旅行でビルバオ~サンセバスチャン~バルセロナのコースをたどり、エル・ブリにも予約の電話をしてみたんだけれど、当然のごとくわれわれの旅行期間中は満席。どころか、同年はすべての営業日が満席、という返答。スペイン滞在中も頃合をはかって連絡してみてくださいね、キャンセルが出ているかもしれませんから。なんて親切なアドバイスをもらい、とにかく空席ができたら旅のスケジュールを大幅変更してでも行くつもりだったが、残念ながら実現はしませんでした。

当時、モダンスパニッシュ、スペイン語で言うとNueva cocina española(ヌエバ・コシーナ・エスパニョーラ)なるガストロノミーの新潮流がけっこうキてて、エル・ブリはダメでも、それっぽい感じの店でそいつを体感しようと、ビルバオでグッケンハイム美術館のレストラン、サンセバスチャンでアルザックマルティン・ベラサデキムガリッツ、バルセロナではコメルス24などのレストランを巡りました。

なかでもムガリッツは感動。もうほんと食べながらうっわ~ってのけぞって、そのまま椅子からずり落ちそうになるほどの衝撃は、いまでも忘れられないです。

ローストした魚が盛り付けられた皿に、さらに澄んだ魚のスープを注いで食べさせる料理(当時、テーブルでスープを注ぐプレゼンテーションが流行っていた気がする)があって、これがものすごいインパクトで。サプライズなプレゼンやビックリな仕掛けがある、ってワケでもなく、ポイントは味なんだけど、うーん、うまく言えないが、本当に美味しい魚なんですよ! なんて・・・これじゃほとんど何も言ってないに等しいが、魚種はなんだったか、メニューがとってあるのでスクラップした資料をひっくり返せば出てくるはずだけど、そんなことより、とにかく美味しい魚。魚の美味しさ、というものが白身の魚肉から、スープの出汁から、ダブルにアピールしてきて、もうたまらない。ある意味、デフォルメされた魚の美味しさ、と言うべきか。そこで食べ手に起こってくるのは、美味しい焼き魚の思い出が走馬灯のように蘇ってくる、という感情的な反応。ディズニーアニメの『レミーの美味しいレストラン』でネズミのシェフが評論家をラタトゥイユでうならす場面を覚えてますか? ずばり、アレです。まったくアレをリアルで体験しちゃいました。食べ手の記憶に突き刺さってくる料理。ラタトゥイユの走馬灯。焼き魚の走馬灯。子供のころ、お母ちゃんが焼いてくれた焼サバなんか食べて「魚ってウマいな~!」とか思った記憶。ニッポンの魚料理のイメージ。うっとり魚ドリームにトリップして、はっと我にかえってレストランで食事していたことを思い出し、目の前の皿に対峙し、もう一口。以上ループ。そんな感じ。

たぶん想像するに、この料理を食べて感動するのは日本人だけではない。日本人なら美味しい日本の焼き魚をイメージするけど、フランス人は美味しい魚のポワレをイメージする。イタリア人も、中国人も、もちろんスペイン人もそれぞれの記憶に残る美味しい魚を・・・って具合に、あらゆる食文化のバックボーンを持った舌と記憶に訴えるようにできてる、はず。言っちゃえば、美味しい魚料理のイデア、みたいな。

もちろん、これ、狙ってるんだろうな~。一皿一皿、特定エッセンスを凝縮し抽出して提示するようなコンセプトの料理ばかりだったような、たしかに。そういえば、クラゲがジュレ状の海水に浮いている、食べる海、てな料理もあった。美味しいんですよ、これがまた。びっくりでしょ?

とにかく当時のスペインでは、こういう「美味しいだけでなく、驚きがなくてはいけない。美味しいだけでなく、クリエイティブでなくてはならない」とされる新しい料理のムーブメントが起こってて、それはなんだかワクワク興奮するものがありました。

これは味覚をはじめとする五感と記憶を総動員した芸術なのかもしれない。

そんなムーブメントの総本山の舞台裏が見られるのが、この映画。

ドキュメントとしては、あまり作りこまれたものではなく、淡々とエル・ブジのスタッフの仕事を追っかけているだけで、けっこうあっさりしてます。

映画冒頭、バルセロナにあるエル・ブリの料理研究所での作業が見もの。たとえば「キノコを油などの液体に漬け込む」っていうコンセプトだけでも、何種類ものキノコと油の組み合わせを試してデータ化し、使えるレシピを導き出す。これは料理というより、見た目、化学の実験のよう。

面白いのは、シェフのフェラン・アドリアがスタッフを叱るシーン。

スタッフが幾通りも試行錯誤した素材の組み合わせのデータを一部紛失しちゃう。PCのハードディスクに書き込まれたデータが失われたわけだけど、紙にはプリントアウトしてあり、情報そのものがなくなったわけじゃないからスタッフはそれほどの重大事と認識してないのだが、フェランはハードディスクのデータをスタッフがバックアップしていなかったことを怒り、そこにこだわる。紙なんかじゃダメだ!と。

なんなんでしょう、これって。

フェランは料理の情報の徹底開示を目指していたらしく、旧体制的な職人から職人の口承伝達、みたいなもんの速度では、やりたいクリエイションのスピードにもう全っ然追いつけない。すべてのレシピは即座にデータ化して全員で素早く共有すべし!

そういう超合理性から発している怒りなのかな、なんて思ったり。

そうそう、市場の魚屋に「旬の魚のリストはないのか?」と詰め寄るシーンもあった。魚屋は、旬のリストは見せられない、とか言って、ちょっと企業秘密っぽい感じを匂わせるのだが、フェランは「なんで見せられないんだ?」って、けっこうこだわる。

とにかく、そういう合理性と自由さが、スペインで、料理において、あの時代に起こったという不思議。スペインで起こるべくして起こった、その文化的バックボーンが知りたいです。

エル・ブリなきあと、サンペレグリーノの世界のベストレストラン50の王者に君臨するのは、デンマークのノーマ。革命はスペインから北欧に移ったのでしょうか?

※ちなみに件のムガリッツは、いま3位!

スペインも北欧も、フランスやイタリアにある美食の権威の重力からは自由そうだもんね。日本人が思うフランス料理の敷居の高さ。とっつきにくさ。ああいう世界から、スペインは自由な気がする。少なくとも、ムガリッツやマルティン・ベラサデキを訪問したとき、客のドレスがカジュアルで驚いた。夜なのに、ジャケット着てたら、けっこうかしこまってる感じだった。

美食家界のアンチマッチョイズム、というか。

少し思ったのは、ムガリッツがサービスも内装も、もちろん料理も繊細で、その繊細さが女性的というか、中性的な感じがして、その超繊細な中性感がすんごいエネルギーと勢いで突き抜けまくってて、これってゲイカルチャー入ってないか? と、下衆な詮索をしてみたり(笑)。

そうそう、ファッションの世界でゲイの人たちの活躍は当たり前で、ゲイの方たちのクリエイティビティなくしてはもう全然成り立たない世界ですが、料理界ってどうなんでしょう?

エル・ブリに端を発する料理におけるデコンストラクティブな創造って、絶対ゲイの人たちが得意なはずですよね。

あ、そうだ、フェランの相方で店のオーナーでもあるジュリ・ソレールが元音楽プロデューサーだった、という事実も気になってたんだ。なんの音楽やってたんだろう。なんか前衛的なジャズとかエクスペリメンタルな音楽だったらハマりすぎだけど、普通のポップのプロデューサーかなあ? 映画にはチラッとうつるくらいで、あんま出てきません。この人の言葉を聴きたかったなぁ。

映画を観終わり、もろもろの妄想に浸りながら銀座の街に出て、しっかし、こんな世界最高の厨房の様子を観せられたあとに、いったい何を食べろというのか。

正月だから、あんまり店も開いてないし。

途方に暮れた夜でした。

(よ)

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by brd | 2012-01-03 13:38 | 本や映画 | Comments(6)


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