インドシナ料理ユニット「アンドシノワーズ Indochinoise」
先日、最近なにかと話題のインドシナ料理ユニット「アンドシノワーズ Indochinoise」を体験してきました。
上の写真は、アンドシノワーズの方に見せていただいた、70年代にベトナムで出版された「酒のつまみの芸術」という意味のベトナム語タイトルが冠されたレシピ本。古いベトナム料理のレシピが載っているのはもちろん、「芸術」という表現に惹かれますね。
さて、きっかけです。
ある食に関するイベントでワインを試飲しながらアンドシノワーズのうわさをしていたら、となりにいた人が「あ、来月行きますけど、ご一緒しますか?」と話しかけてきて、偶然の出会いの驚きと、初対面の相手を会食に誘ってくださるその方のフランクさに感謝しつつ、もちろん即便乗。
もともとベトナム、ラオス、カンボジアは大好きな国なので、興味津々です。
インドシナ、つまり旧フランス領インドシナというコンセプトから思い浮かべるイメージは、三国の昔ながらの料理と、コロニアルでレトロなおしゃれさだったのですが、実際にアンドシノワーズを体験してみると、それはそれほど間違っておらず、最近ホーチミンなどでは家庭的な昔ながらのベトナム料理を、懐古趣味と現在の感覚を交えた端正なしつらえで提供するのがトレンドになっているようなムードがあって、そういう流れとの近縁性を感じつつも、しかし何かまた、それに加えてアンドシノワーズのお二人の独自のこだわりもあるような気がして、なんとも豊かな気持ちになりました。
料理が美味しかったのはもう言わずもがな、なのですが、キッチンやダイニングのしつらえ、そしてインドシナの食材、食器、料理道具などに対するフェティッシュとも言いたくなる愛情と研究熱心さに取り囲まれ、ゲストはもう、うっとりと彼らの世界に浸っているしかありません。
さらに感じたのは、料理の説明や、その料理に使われている食材の背景など、お二人との楽しい、そして食文化への知的な興味をくすぐられるコミュニケーションをはさみながら進むディナーは、普通の飲食店での体験とは明らかに一線を画すなあ、ということ。
これはもう料理を通じで行うことができる、新しいスタイルの表現のひとつなんじゃないかと思ったりもしました。
また、お二人はアジアの発酵食品にかんしても造詣が深いようで、なんと、この日は「カンボジアの納豆」を味見させてくれました。
ちょうど、高野秀行さんの『謎のアジア納豆』を読んでいる最中でしたから、これも興味津々。
カンボジアの納豆は、日本の納豆と同じあのにおいがしますが、糸はほとんど引かず、汁気が多くて、塩味がしていました。調味料として使うんだそうです。
最後はカセットテープ・デッキのついた、レトロなポータブル・レコードプレイヤーで、南ベトナム歌謡のドーナツ盤を聴かせていただくという、なんともアンドシノワーズ的と思えるもてなしを受けながら、幸せな気分を長引かせつつ帰路につきました。
来年はメコン川を船で旅しながら、流域の食文化を取材してくるそうです。
うらやましい。
楽しみですね。
☆
<2016年12月>
上の写真は、アンドシノワーズの方に見せていただいた、70年代にベトナムで出版された「酒のつまみの芸術」という意味のベトナム語タイトルが冠されたレシピ本。古いベトナム料理のレシピが載っているのはもちろん、「芸術」という表現に惹かれますね。
さて、きっかけです。
ある食に関するイベントでワインを試飲しながらアンドシノワーズのうわさをしていたら、となりにいた人が「あ、来月行きますけど、ご一緒しますか?」と話しかけてきて、偶然の出会いの驚きと、初対面の相手を会食に誘ってくださるその方のフランクさに感謝しつつ、もちろん即便乗。
もともとベトナム、ラオス、カンボジアは大好きな国なので、興味津々です。
インドシナ、つまり旧フランス領インドシナというコンセプトから思い浮かべるイメージは、三国の昔ながらの料理と、コロニアルでレトロなおしゃれさだったのですが、実際にアンドシノワーズを体験してみると、それはそれほど間違っておらず、最近ホーチミンなどでは家庭的な昔ながらのベトナム料理を、懐古趣味と現在の感覚を交えた端正なしつらえで提供するのがトレンドになっているようなムードがあって、そういう流れとの近縁性を感じつつも、しかし何かまた、それに加えてアンドシノワーズのお二人の独自のこだわりもあるような気がして、なんとも豊かな気持ちになりました。
料理が美味しかったのはもう言わずもがな、なのですが、キッチンやダイニングのしつらえ、そしてインドシナの食材、食器、料理道具などに対するフェティッシュとも言いたくなる愛情と研究熱心さに取り囲まれ、ゲストはもう、うっとりと彼らの世界に浸っているしかありません。
さらに感じたのは、料理の説明や、その料理に使われている食材の背景など、お二人との楽しい、そして食文化への知的な興味をくすぐられるコミュニケーションをはさみながら進むディナーは、普通の飲食店での体験とは明らかに一線を画すなあ、ということ。
これはもう料理を通じで行うことができる、新しいスタイルの表現のひとつなんじゃないかと思ったりもしました。
また、お二人はアジアの発酵食品にかんしても造詣が深いようで、なんと、この日は「カンボジアの納豆」を味見させてくれました。
ちょうど、高野秀行さんの『謎のアジア納豆』を読んでいる最中でしたから、これも興味津々。
カンボジアの納豆は、日本の納豆と同じあのにおいがしますが、糸はほとんど引かず、汁気が多くて、塩味がしていました。調味料として使うんだそうです。
最後はカセットテープ・デッキのついた、レトロなポータブル・レコードプレイヤーで、南ベトナム歌謡のドーナツ盤を聴かせていただくという、なんともアンドシノワーズ的と思えるもてなしを受けながら、幸せな気分を長引かせつつ帰路につきました。
来年はメコン川を船で旅しながら、流域の食文化を取材してくるそうです。
うらやましい。
楽しみですね。
☆
<2016年12月>
by brd
| 2016-12-17 20:17
旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks
by brd
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