不自由で自由なビール

こんなイベントに行ってきました。

THE OYATSU Vol.6
不自由で自由なビール

http://theoyatsu.com/the-oyatsu-vol-6/

e0152073_2358111.jpg

登壇者は、赤坂「sansa」の橋本一彦さんと、代沢「Salmon & Trout」の森枝幹さん。 

ビール好きにとって、とても示唆に富む内容でした。

まずタイトルが最高ですね。

不自由で自由なビール。

e0152073_23581245.jpg

日本酒やワインと違って、ビールは副原料に寛容。

つまり、酵母や水のほか、日本酒は米しか使わないし、ワインはブドウしか使わない。

一方で、ビールは穀類のほかにホップを入れるし、ほかにスパイスでも、ハーブでも、フルーツでも、コーヒーでも、何を入れたって基本的にOK。

つまり、醸造プロセスそのものに自由がある。

e0152073_23581428.jpg

ここからは壇上のトークを聞いての私見ですが、もうひとつ、アメリカンクラフトが拓いた自由があるように思います。

ブルワリーを中心としたコミュニティの自立や、大企業に支配されないモノづくり、あるいは新奇な試みが歓迎される寛容さであるとか、ビールを巡るあらゆるレイヤーの自由を確立してきたのが、アメリカに端を発するクラフトビールムーブメントに違いありません。

醸造プロセスおける自由。

そして、経済的、社会的、政治的、文化的、精神的な自由。

このふたつの自由は、たぶん無関係ではない。

橋本さんの話を聞きながら、そんなことをつらつらと、勝手に考えていました。

さて一方で、ビールの不自由さとは何でしょうか?

ビールの自由を謳歌するためには、歴史や伝統を理解する努力や、知識や修練などが必要とされたり、なにがしか、ある種の「不自由」をともなうはずだ。

そんな風に橋本さんは言っていたと記憶しています。

さらに、森枝さんによれば、こんなに自由なはずのビールなのに、ガストロノミーの世界では明らかにワインや日本酒より、地味な存在にとどまっているそうです。

またまた勝手に考えるに、それは長年にわたる大企業による産業ピルスナーのイメージ刷り込みによって、みんながビール本来の自由さを、すっかり忘れてしまったからじゃないかなあ。

これが、一番の不自由だと思う。

この不自由から、自由を取り戻すための運動が、苦いビールや、酸っぱいビール、いろんなビールがあることを知って、それを料理に合わせたり、いろいろやって楽しむこと。

これこそが自由なんだ、って気がします。

会場で振る舞われた橋本さん考案の“Oyatsu”は、胡椒のアイスクリームにbfmボンシェンをかけた“アフォガード”。

e0152073_23581597.jpg

アイスに、ボンシェンをかける。

e0152073_23581762.jpg

美味しかった!

複雑な味と香りをともなうボンシェンの酸、アイスのクリーミーさと乳製品の油脂、存在感ある胡椒のスパイシーさ。

すごく自由な組み合わせだけれど、味覚の本質はとらえているから響いて来るんだと思います。「オヤツ」っていうより料理でした、完全に。

形骸化したルールや、教条主義的な縛りから、ビールは最も自由なお酒だと思いますが、その本質というものは厳然と存在していて、そこをとらえなければ「自由」とか「何でもアリ」とか言ってても意味がない。そういう普遍性から人間が自由になれるはずがない。だから、不自由とも言える。

ボンシェンのアフォガードを食べながら、例によって勝手に哲学してみました。

以上、お二人のトークを拝聴しつつ、勝手に私個人の脳内で展開した内容をメインに書いてみました。ほとんどイベントのリポートにはなっておりませんので、あしからず。

そうそう、会場で気になっていたこの本を手に入れました。

e0152073_23581850.jpg

ここにある橋本さんの言葉。

「スペック至上主義的な考えを、ねじ伏せたいですね」

もう一度、sansaに訪問しなければ。
[PR]
by brd | 2016-07-27 00:13 | 東京 | Comments(7)
Commented by tanukidaponta at 2016-07-27 21:26
自由か自由じゃないかというのは、ルールの問題ポンで、他の酒が本当に不自由かというと、必ずしもそうでないように思えるポン
最近、頻繁に遊びに行くアルメニアでは、ワインといってもブドウだけじゃなくて、ザクロやベリーを使ったものも普通に製造/販売されているポン
スパイスを入れることは、さすがに知らないポンが、スパイスの風味を持つものもあったりするポンで、結構幅広いかと思うポン
果物を使って醗酵させるというのがルールポンで、その他は結構自由だと思うポン

ウォッカに至っては、アルコール(笑)を使うというのが統一的な基準としてあるくらいで、果物の風味をつけるもの、ブランディーや草を入れるものから、スパイスを入れるものまで、こいつもかなり自由に作られているポン

単なる酒好きの、ビール以外の酒の擁護ポン~(笑)

正直言えば狸田、ベルギービールは、ビールじゃなくて「ベルギービール」という別の飲み物だと思う教条主義者ポン~~
ψ(`∇´)ψ
Commented by brd at 2016-07-27 23:20
こんにちは。

というかお久しぶりです!!!

いつのまにやらビール徹底擁護派となった、美味しい世界旅行です(笑)。

さっすが狸田さん、ひさびさなのに、ばっちりいつものこういう系ネタに反応してくれて一貫性ありますね!

日本酒やワインは醸されるのを待つもの、ビールは作り込むもの、なんていう人もいますね。

醸されるのを待たなきゃいけないから不自由、とも言えないし、作り込めるから自由とも言えないっすよね。

そもそも酒の醸造に自由も不自由もないんです。

が!

あえて「自由」っていう切り口で切ってみたくなる。

それがビールです。

自由って難しい。

自由って、制約があるからこそ、制約からの距離によって、自由だといえるわけですよね。

さて、ビールの、酒の、食の自由ってなんでしょう?
Commented by tanukidaponta at 2016-07-28 23:01
>さて、ビールの、酒の、食の自由ってなんでしょう?

「レッテル」だと思うポン
え? レッテルじゃ自由じゃないポン??

狸田、途上国が専門ポンで、最近特に思うのは、画一化されたものがないと、自由じゃない。自由は豊かじゃないと享受できない。ということポン

手元にある原料で、自分の好きなように酒でも食べ物でも作るポン
ところが、それじゃ効率(コスト)が悪くて、生産が集約化されたり、場合によっては粗悪品(三増酒)なんていうものも出てくるポン
粗悪品は排除されるとしても、コストパフォーマンスが良いものは、市場を制圧するポン
そういう時代では、手作りだから良いとかいうセリフは全く意味を持たないポン
ナショナルブランドが幅を利かせるようになって、所得も向上して、ちょっと他人と変わったものを飲み食いしたい、自分の好みに近いものを見つけたいということになって、ナショナルブランドの束縛から逃れようとするポン
それが「自由」じゃないかと思うポン
そして、その「自由」というのが、少数の人に(熱烈に?)支持される「付加価値」になるポン

冒頭にレッテルというのは、ブランドと書けばよいところポンが、それでは話がおもしろくならないポン(笑)
自由印のレッテルが、差別化のサインということポン~
Commented by tanukidaponta at 2016-07-28 23:06
ちなみに狸田、商業的に「自由」なものとして作られたものには乗せられないポン~(笑)

狸田にとっては、「普通」だけど「知られていない」ところに価値を見出すポン
アルメニアから、何十キロものワインを、税金払ってまで持ち込むのは、日本市場という決められた枠から「自由」になるためポン~

(よ)さんと、久しぶりに飲みたいポン~~
ψ(`∇´)ψ
Commented by brd at 2016-07-29 07:50
商業化されたブランド的レッテル的「自由」なんて、本当の自由じゃない。

その考えもわかるんですけどねー。

アメリカのクラフトビールの歴史がおもしろくって、正にその「自由」のレッテルをビジネスに生かしているわけなんだけれど、その根底にはかつてドイツ移民とかが自由に(「」なしの自由ね。それこそアルメニア人のワインのような)勝手に作ってたビールが、大手に取り上げられて、4桁の数あったブルワリーが数十とかになっちゃう。それを50年くらいかかって取り返すっていうストーリーがあって、それはリアルな物語なんだけど、同時にビジネスの宣伝文句で「ブランド」でもあるという。

あと大手が広めたのがピルスナーしかないから(イエローフィジービア、とかいう蔑称まである)、いろんなビアスタイルを取り戻そう、っていう多様性の問題もある。

そもそもバドワイザーとかの大手はマイクロブルワリーの敵なんだけど、そんな話が日本人にも理解できるベースには、大手が国際的にビールという飲みものを広めたという前提がある。すべてのできごとは、からみあってる。

つまり、ビールって、最初っからブランドとか、ビジネスとか、もっと言えばポップカルチャーとか、経済とか、そういうものと切っても切れない存在なんです。音楽ビジネスと似てるかも。たとえば、反体制的なパンクバンドを売るのもブランドビジネスですよね。でも、そのバンドが歌ってる内容が全部フェイクかというと、そうでもないかもしれない。

そういういろいろを含んだ上で、ビールって酒を考えると、面白いんですよ。

話が飛びますが、食の自由って、基本の基本は、飢えないことだと思います。

ちゃんと食べられること。

出来れば、好きなものを好きなときに食べられること。

さらに、美味しいと思って食べられること。

もっと言えば、食い物関して議論したりする余裕があること。

ああ、いま自由を感じてます^^

今度飲みましょう!



Commented at 2016-07-30 17:45
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by arak_okano at 2016-08-22 15:47
残暑お見舞い申し上げます。
アラック、全く詳しくないのですが、ドイツでは、
麦芽とホップと酵母以外が入るとビールではなかった
ような。
日本って、昼から飲むな、なんて、アラックは蕎麦屋で
憩うが大好きです。
ウインブルドンみていたら、ワインを飲みながらのように
見えました。
アメリカでもやっぱりお酒でスポーツでしょ。
一度、J1の浦和レッズと横浜Fマリノスの試合をビールを
飲みながら観戦しました、バグースです。


旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『味の形 迫川尚子インタビュー』発売中。姉妹ブログ【ワダ翻訳工房】もどーぞ。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks


by brd

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

カテゴリ

全体
インド
フランス
マレーシア
タイ
ミャンマー
中国
香港
ベトナム
韓国
東京のインド
東京のイタリア
東京の中国
東京のミャンマー
東京の韓国
東京のウイグル
東京のフランス
東京のタイ
東京のベトナム
東京のマレーシア
東京のネパール
東京のドイツ
東京のスペイン
東京のイスラエル
東京のニュージーランド
神奈川の中国
神奈川のタイ
神奈川のイタリア
富山のパキスタン
東京
神奈川
愛知
京都
石川
富山
茨城
本や映画
おうちで世界旅行(レシピ)
弁当
シンガポール
デンマーク
秋田
アメリカ
台湾
神奈川のベトナム
フィンランド
未分類

ブログパーツ

本棚

『食は東南アジアにあり』
『食は東南アジアにあり』
星野龍夫
森枝卓士


『食べもの記』
『食べもの記』
森枝卓士


『アジア菜食紀行』
『アジア菜食紀行』
森枝卓士


『考える胃袋』
『考える胃袋』
石毛直道
森枝卓士


『ごちそうはバナナの葉の上に―南インド菜食料理紀行』
『ごちそうはバナナの葉の上に―南インド菜食料理紀行』
渡辺玲


『食は広州に在り』
『食は広州に在り』
邱永漢


『檀流クッキング』
『檀流クッキング』
檀一雄


『中国料理の迷宮』
『中国料理の迷宮』
勝見洋一


『中国庶民生活図引 食』
『中国庶民生活図引 食』
島尾伸三
潮田登久子


『食卓は学校である』
『食卓は学校である』
玉村豊男


『地球怪食紀行―「鋼の胃袋」世界を飛ぶ』
『地球怪食紀行―「鋼の胃袋」世界を飛ぶ』
小泉 武夫


『世界屠畜紀行』
『世界屠畜紀行』
内澤旬子


『ソバ屋で憩う』
『ソバ屋で憩う』
杉浦日向子と ソ連


『有元葉子の料理の基本』
『有元葉子の料理の基本』
有元葉子


『ル・マンジュ・トゥー 素描(デッサン)するフランス料理』
『ル・マンジュ・トゥー 素描(デッサン)するフランス料理』
谷昇



『料理通信』


『Arche+』
アーチプラス
在タイ女性のための
日本語フリーペーパー



        ☆


料理通信
アンバサダーブログ
「ニッポン列島食だより」

に寄稿しています。

☆2013/03
江古田「HEM」のイベント
ベトナムおやつ屋台村


☆2012/05
カレー&スパイス伝道師
渡辺玲さんのプライベート・ディナー


☆2012/01
渋谷にあるブルターニュ
「クレープリー・ティ・ロランド」


☆2011/10
シャン料理「トーフー」は
高田馬場の新名物?


☆2011/08
信州食材meetsタイ料理!
「ヤム! ヤム! ソウルスープキッチン」


☆2011/07
震災後の「ソバ屋で憩う」
高田馬場「傘亭」

以前の記事

2017年 10月
2016年 12月
2016年 10月
2016年 07月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2009年 10月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月

検索

最新のコメント

食べ物も器もすべて異次元..
by arak_okano at 08:12
残暑お見舞い申し上げます..
by arak_okano at 15:47
商業化されたブランド的レ..
by brd at 07:50
ちなみに狸田、商業的に「..
by tanukidaponta at 23:06
>さて、ビールの、酒の、..
by tanukidaponta at 23:01
こんにちは。 とい..
by brd at 23:20
自由か自由じゃないかとい..
by tanukidaponta at 21:26
おはようございます、アラ..
by arak_okano at 06:20
アラック、こんなに高級で..
by arak_okano at 21:11
料理もビールも高級高級品..
by arak_okano at 21:32

最新のトラックバック

venusgood.com
from venusgood.com
http://venus..
from http://venusgo..
www.whilelim..
from www.whilelimit..
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
冬至に南瓜
from 異邦人の食卓
ドリアン
from ポンポコ研究所
久々わんこ&深谷ねぎ(2)
from ソーニャの食べればご機嫌
Saravana Bha..
from ポンポコ研究所

タグ

記事ランキング

ブログジャンル

食べ歩き
旅行・お出かけ

画像一覧