1980年に創刊した、男の食の雑誌 季刊『饗宴』

古書店で雑誌『饗宴』を手に入れた。

今から35年前の1980年に創刊した食に関する雑誌で、副題に「男の食の雑誌」「季刊・味のコレクション」とある。

現在こういう路線の雑誌が出ていたら自分は間違いなく買うであろう文化寄りの内容で、作りもかなりゴージャス。

ウェブでかるく検索してみたが、ほとんど言及している人がいないので、(よ)が引っかかったポイントだけざくっと簡単に紹介してみよう。筆者の方々の敬称略です。

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『饗宴』創刊号 1980年冬

表2の対向に挟まれたトレーシングペーパーのような透ける紙に印刷された巻頭言は、詩人の田村隆一。

次に目次があり、その次に出てくるのは、ネクタイしめた野坂昭如がレストランでステーキにナイフを入れているドアップ写真の断ち落とし。カッコイイ~。創刊号の巻頭特集は「STEAKE考」。野坂昭如が写真家の浅井慎平とステーキ食べながらステーキ対談していたりする。エスコフィエのトゥルヌド・ロッシーニからテリヤキステーキまでステーキ図鑑なども。昭和の日本人にとってビーフステーキは憧れの西洋食の代表、だったのかもしれない。

さらに荷風のめぐった浅草の店の話や、京都論があって、後半のカラーページはインドの宗教と食。

連載は澁澤龍彦、色川武大。そして佐原秋生×山本益博のフランス料理対談連載なども(2号目より見田盛夫が加わる)。

さらに巻末の飲食店紹介の連載がクロスレビュー方式で、見開き一軒をふたりの論者が批評。毎回、フランス料理店を前出の佐原、マスヒロが、寿司、蕎麦、てんぷら、洋食などを矢吹申彦と徳大寺有恒が、中国料理を小倉エージと大江田信が担当している。批評の尺度は「味」だけでなく、場所、外観、内装、サービス、つまり食事にまつわるトータルな「幸福度」であると宣言。

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第2号 1981年春

特集「谷崎潤一郎の[美味]耽溺」は谷崎のエロスと食について。続いて「食と音楽」では春田三治、近藤進、色川武大、すぎやまこういちの4人が「コルトレーンが・・・」とか言いながら、なぜかみんなでベトナムの揚げ春巻きチャージョーを作って食べるという趣向。

「いつか見た食卓」は浅井慎平が撮影した食べかけの料理の写真とエッセイ。さらに西伊豆で釣ったウツボを食べる記事や、ビルマの食べるお茶の葉ラペットゥの話など。

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第3号 1981年夏

特集「レストランを食べよう」では[いまこそマキシムする愉しみ]と題して、前出の佐原、マスヒロ、三田の3人がパリの「マキシム」でディナーしながら鼎談するフランス料理ドキュメント。鼎談の下に時刻が示され、入店から食事、退店時まで間の推移がわかる編集になっている。さらに脚注は発言者がそれぞれ署名で執筆する念の入れよう。

「北陸・珍味紀行」では自然と富山の項に目が行く。黒づくりに鱒すし、ほたるいか、など。ワイン特集は日本ワイン批評の草分け山本博が監修。スパイス特集には石毛直道などが寄稿。他には、関係者が勢ぞろいした和田誠邸での美食パーティの様子や、台北の食についてのカラー特集、貝原益軒「養生訓」の食と性など、たっぷり濃い目。

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第4号 1981年秋

巻頭カラーがド迫力。篠山紀信撮影の「食のシルクロード」。広州の清平市場、西安、蘭州、ウイグルなど中国の写真が圧巻。さらにパキスタン、アフガニスタン、イラン、イラク、シリア、トルコ、ギリシャ、イタリアまで大ボリュームの大陸横断食ドキュメント。

たいめいけんや煉瓦亭のカラーから始まる洋食特集の鼎談が、レイバンのサングラスかけた糸井重里に榎本了壱、山本益弘。秋鯖に関する記事のイラストが吉田カツ描くかっこいい鯖だったり・・・。

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第5号 1981年冬

巻頭は「江戸の味、東京の味」特集。色川武大がもんじゃを食ったり、加藤武が築地に行ったりするカラーから始まり、寿司、蕎麦、てんぷら、うなぎ、江戸論、築地マップまで、これまた大ボリューム。

ほかには笠井潔の作ったブイヤベースをすが秀実ほかの4人で食したり、小松左京と小沢昭一の祇園対談など。後半カラーは韓国のキムチ取材。



版元は『私の部屋』などを出していた婦人生活社。今はもうない出版社か。

食といえばレシピや店紹介などがメインで、快楽としての食、文化としての食みたいな方向性をがっちり打ち出した雑誌は、当時としてもかなり珍しかったんじゃないかと思う。

たとえば音楽やサブカルチャーなんかの雑誌に関してであれば、マニアックな研究書などが出ていて、歴史的なことはかなり探求されている気がするけれど食の雑誌ってどうなんだろう。ちょっと忘れられていたんじゃないかな。

食を自由なフィールドに解き放つ活動全般に興味があるので、過去にこういう雑誌が出ていたというのは、ちょっと嬉しい発見。

もう少し探究してみます。

(よ)

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by brd | 2015-01-20 01:01 | 本や映画 | Comments(0)


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