カオパット・アメリカンとスパゲティ・ナポリタン

『LUCKY PEACH』っていう雑誌がストリートフード特集をやっていて、タイのカオパット・アメリカンなる料理を紹介していた。

e0152073_2358258.jpg

カオパット・アメリカン。

つまり、アメリカ風炒飯。

冷凍カット野菜と干しぶどう入りのケチャップ味チャーハンに、目玉焼きがのっていて、鶏の唐揚げとウィンナーの揚げたのが添えてある。

タイ料理なのか?

アメリカ料理、じゃないだろう。

というよりまず、かなりぞんざいそうな料理である。

記事では、チャーハンに添えられたソーセージに注目している。

タイにはサイクロークやサイウアなど美味しいローカルのソーセージがちゃんとあるけど、一方でいわゆる「ウィンナー」も食べられている。カオパット・アメリカンに添えられているのは、そういう袋詰めされてスーパーで売られているようなタイプの「ウィンナー」。

日本でいう脚の開いたタコ型のウィンナー(油で揚げてある)を、記事では「ウィンナー・ブロッサム」と呼んでいて、さらにこのウィンナー・ブロッサムをビニール袋に入れてソースプリックをまぶしたのだけを買うこともできるみたいだ。

正直言えば、タイでこんなの見た覚えがない。

でもきっと、それは自分がわかりやすいタイ料理にしか興味がなくて目に入らなかっただけで、記事に書いてあるとおりバンコクとかには普通に存在する屋台料理なんだろう。

下関さんに訊いたら、やっぱり、タイに住んでいたころはしょっちゅう食べていたそうだ。

長くバンコクに住んで、ある時期タイ料理的な味付けに飽き飽きして来て、なにかタイ料理的ではないものが食べたい。そんな時期に食べていたのが、カオパット・アメリカンなんだそうだ。

なるほどね。

外国人にとっては、良くも悪くもタイ料理っぽくないけれど、タイにしかないストリートフードには違いない。

素材はタイのものじゃないけど、文脈がタイなのだ。と、記事の筆者は書いている。

そういう意味でいうと、日本のスパゲティ・ナポリタンなどは、まさにその種の料理なんじゃなかろうか。日本料理には見えないし、もちろんナポリにも存在しないが、しっかり日本ローカルな文脈において愛されている料理。

日本料理マニアの外国人も、なかなかナポリタンには辿り着くまい。

しかし、日本のイタリア料理史を思うに、伊丹十三の本などでアルデンテという言葉を知り、ナポリタンなどイタリア料理ではない、とか言って真剣に怒ったりする時期があり、そのうちにイタリア料理も北から南で地方ごとにそのテイストは大きく異なる実体を知るにいたり、芯を残したパスタが全てではないとの認識も浸透。そのうちにスパゲッティナポリタンに懐かしい日本の昭和の香りを発見しちゃう懐古趣味もやってきて、老舗の喫茶店であえて昔ながらのナポリタンを注文してみたり、ホテルのダイニングなどが「ちょっと気取った大人のナポリタン」的なメニューを提供したりするのも、もう別に目新しくもなんともない。

そう考えると、なんだかナポリタンは日本の料理史において注目すべき料理のような気がしてこないか。

同じ意味で、カオパット・アメリカンも注目すべき料理なのだろうか。

ケチャップ味というのも共通しているし。

アジア人の欧米への憧憬。その種の分析がいくらでもできそうなネタではある。

記事の筆者Kris Yenbamroongさんは、ロサンゼルスで人気のタイ料理店「NIGHT+MARKET」をやっている注目の若手タイ人シェフらしい。

なるほど~。

そんな経緯でカオパット・アメリカンについて調べていたら、なんと渋谷でそれをメニューに載せているタイ料理店があるではないか。

(つづく)

(よ)

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by brd | 2014-10-11 12:27 | 本や映画 | Comments(13)
Commented by ushiotome at 2014-10-13 12:14
こんにちは!昨日の渡部さんのイベントでお隣だった者です。
ブログ楽しく拝読しました!目のつけどころが面白くて親近感があり、なおかつ自分では表現しにくいツボで心に残ります。。。楽しい仮想体験をさせて頂けそう♪♪ これからもよろしくお願いします。
Commented by (よ) at 2014-10-13 22:59 x
ushiotomeさん

コメントありがとうございます。
昨日は楽しかったですね~。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

例の秘蔵写真^^見つかったら見せてくださいね~。

昨日のイベントについて、いくつかつぶやきました。

https://twitter.com/oishiisekai/status/521506807424897024
https://twitter.com/oishiisekai/status/521514291250212864
https://twitter.com/oishiisekai/status/521514518321434624
https://twitter.com/oishiisekai/status/521514694750654464
https://twitter.com/oishiisekai/status/521515777032085505

(よ)
Commented by tanukidaponta at 2014-10-17 22:12
例えば、もっと露骨にมักกะโรนี(マッカローニー)という料理が、極普通の食堂で、極普通に食べられているポンが、狸田、これは間違いなくタイ料理だと思うポン

タイ人が作ったものは、マカロニだろうと、スパゲッティーだろうと、きっとタイ料理になるポン(笑)
一方で、日本人が変化を加えたものは、タイ料理がベースでも「タイ風(日本)料理」になってしまうというのが、原理主義者?の狸田の考えポン~~
(これは若干極端な言い方をしているポンが...)
Commented by (よ) at 2014-10-18 16:43 x
原理主義者の狸田さん

そうそう。
下関さんもパットマカロニの話してました。著書のレシピ本にも載せてるし。
そんな下関さんも本に載せてない微妙なポジションの「タイ料理」が、
アメリカン炒飯、というわけです。

狸田的原理主義にのっとれば、
・タイ人が作った洋風タイ料理は、タイ料理。
・日本人が作った日本風タイ料理は、日本料理。
・日本人が作った洋食も、日本料理。
て、ことになって、とても分かりやすいですよね。

ただ上の図式だと、
例えばアメリカ生まれのタイ人(フランス留学経験あり)が作った
フレンチなセンスの入ったモダンタイ料理は何料理なのか、
って問題は解決しないんだポン。
Commented by tanukidaponta at 2014-10-18 19:09
>例えばアメリカ生まれのタイ人(フランス留学経験あり)が作った
>フレンチなセンスの入ったモダンタイ料理は何料理なのか、

これは、タイ風無国籍料理ポン(笑)

タイの国籍法は、1913年からタイ国外で生まれた場合でも父親がタイ人だったらタイ人になるポンが(父親が外国籍で、母親がタイ人でも海外で生まれた場合にタイ国籍が認められたのは、92年国籍法からポン)、狸田は、タイ生まれにこだわるポン~(笑)

タイの食材等々の環境で育ったタイ人が作ったものをタイ料理と呼ぶポンで、幼い時に外国が入っちゃうと違っちゃうポン

ほら昔から、「僕らは六つ子だ、ぼく、おそ松」というポン~
ψ(`∇´)ψ

ちなみに、マカロニは、狸田が知っている限りは、どこに行っても「マッカローニー」という料理名で、「マカロニ炒め」とかになっていなかったところが不思議に思ったポン
Commented by brd at 2014-10-19 02:13
> タイ風無国籍料理ポン(笑)

わはは。

おそ松くんネタ、実はわからない。観たことないんですよ。

ちょっと、面白いと思うので、あえて反論めいたことを書いてみますね。

僕がよくブログで言及するバンコクのタイ料理店「ナーム」の料理は、デイビッド・トンプソンというオーストラリア人の料理ですが、タイ料理と言えないのか、どうか。

タイ料理だけでなく、アジア料理全般(とくに屋台料理など)に言えることですけど、フランス料理みたいに体系化を経ていない、ってことがあると思うんですよね。

つまり、何が言いたいかというと、エスコフィエみたいな巨人が「これがフランス料理である」って定義してくれているので、それにのっとってさえいれば日本人が作ってもフランス料理って認められるわけです。もっと言えば、そういう誰もが参照し、勉強し、立ち戻れる原典があるから、世界にフランス料理が広がる可能性も大きくなる。事実そうなっていますし、それが文化の強さにもなっている。そういうことにおいて、ヨーロッパはアジアより断然に優れていると思います。

(続く)
Commented by brd at 2014-10-19 02:14
(前コメントより続く)

ただ、別にタイや日本がそれを真似する必要はない。日本人が作るのが日本料理、タイ人が作るのがタイ料理、そういう素朴な定義で別にかまわない。そういう感覚もわかります。文化の成り立ち自体の違い、ともいえる。

でも、ナームのデイビットさんは、そうは考えていないと思います。

つまり彼は、自分がタイ料理を体系化しようと、そのあたりまで射程に入れて仕事しているような気がする。

オーストラリア人のタイ料理店なのに、モダンタイキュイジーヌとかではなく、律儀にオーセンティックな感じを目指しているし、ずいぶん文献とかにも当たっているそうですよ。

タイ人がやらない仕事を、オーストラリア人がやる可能性があるってことです。すごく面白いし、興味深いのですが、その一方で、そこはもっとタイ人ががんばるべきだよなあ、って思ったりもしますね。

(よ)
Commented by tanukidaponta at 2014-10-19 07:47
言葉も、使っている本人は意識をしていないものの、法則とかを見つけて、あーたらこーたら言うのが言語学ってやつポンで、料理の世界も同じかと思うポン
そのデイビットさんが、料理学者ってことかと思うポン

定義ができると、例のタコちゃんウインナーや、マッカローニーが、どっちに分類されるか興味があるポン~
Commented by tanukidaponta at 2014-10-19 07:51
で、実は狸田、タイの文化には結構否定的ポン(笑)

否定的という意味は、独自の進化であることは認めながらも、結構根無し草であるし、大いなる模倣品文化だと...

でも、それが強みになっているポンで、世の中は、なかなか複雑ポン~
(同じことは、シンガプーラにもあてはまるポン)
Commented by brd at 2014-10-19 23:28
言語と料理をダブらせて考えるのは、アリかも。

タイ、あとシンガポールやマレーシアなんかもそうですが、本当にざっくりおおまかに単純化して見れば、中国的な要素とインド的な要素のかけあわせのバリエーションにも思えますよね。

話はどんどんそれますが、やっぱり、なんだかんだ言って、アジア的なものの中心はインドと中国にあるような気がする。

タイ料理が、なんでこんなに日本人に人気になったかという質問の答えとして「日本の国民食、カレーとラーメンに類する料理があるから」って言えるかな、と。つまり、インドと中国なんですよね。

ま、シンガポールやマレーシアも事情は同じようなものだから、なんとも言えないですが。

や、同じではないかも。

シンガポールやマレーシアは、中華、インド、マレーが混ざり合わずに、独立してますもんね。
Commented by shimo at 2014-10-20 08:58 x
(よ)さん アメリカ炒飯は「バンコク思い出ごはん」のほうに載ってますよ~(P68) タイ料理の定義、面白いですね! 
Commented by shimo at 2014-10-20 11:29 x
私なりのタイ料理の定義を考えてみると、タイ人(タイ料理ネイティヴ)が食べて「タイ料理だ」と思えばタイ料理。
作り手や食材の国籍は関係ないかも^_^。
Commented by brd at 2014-10-22 04:00
shimoさん

あれ!?

載ってますね。そうですよ、載ってるんですよ。
「アメリカ風ケチャップライス」
たいへんたいへん失礼いたしました!

干しぶどうを入れるセンスってなんかわかるような感じがしますよね。
むかし母親がピラフに干しぶどう入れてたような記憶があって、
よくよく考えるとトルコのピラウとか、干しぶどう入ってるのがある気がします。
だから、若干アラブセンス?

shimoさんのタイ料理定義、わかります。
タイ料理ネイティブの頭の中で、こういうのがタイ料理だよなあ、って
イメージがあって、それが結局タイ料理なんでしょうね。

だからそれは、狸田さんが言う、タイ人が作るのがタイ料理、っていう定義と、
結局同じことを言ってるといえば、言ってるんだと思います。

そして、そういうタイ料理に、タイ料理ネイティブでない
日本人やオーストラリア人やアメリカ人などが、ああだこうだと言いながらかまける、それもまた、
興味深くもほほえましい光景である、そんな風に思ってます。

(よ)


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