バンコク : 外国料理についての「勘違い」をめぐって 「SRA BUA by KIIN KIIN」

バンコク : 分子ガストロノミー的タイ料理「SRA BUA by KIIN KIIN」の、つづき。

メインダイニングのテーブル案内される。

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席に座ると、ラウンジで注文した出てきたビールが出てきた。

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ディム・サム・ビアー、だって。

Mikkellerというデンマークのマイクロブルワリーがアジア料理向けに醸したクラフトビールなんだそうな。レモングラスとコリアンダーをブレンドして醸造しているとのこと。

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ラベル。たどたどしげな「虾饺」の簡体字がアヤシイ(笑)。

さて、「スラブア」はコペンハーゲンのタイ料理店「キンキン」のバンコク支店のような存在らしいが、コペンハーゲンといえば言わずと知れた「ノーマ」。来年、期間限定でオープンするノーマ・ジャパンが、なにか食通たちの間で大事件のように言われているけど、どうなんだろう。

「ノーマ」はさておき、北欧ガストロノミー+タイ料理店とくれば、折衷・混淆に食文化のリアルを探る【美味しい世界旅行】としてはチェックしないではいられない(なんて)。

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右は具の入っていないトムヤムスープ。そして、左は胡椒のたくさんかかった温かいマヨネーズソースで覆われたエビ。これを交互にいただく。

つまり、スープと具がセパレートされたトムヤムクン。

なるほどー、という感じ。

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サービスの女性がクロックでなにやらポクポクやりはじめた。

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できたのは、こういうナムチム。

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この料理のきゅうりのつけ合わせのところにかけてくれる。

メイン食材は、右がロブスターのフリット、左がグリルしたイカ。両方の下にしいてある薄緑のクリームはタイ風味のメレンゲ。

ところで、本レストランレポート前半のコメント欄に、ちょっと面白い意見があった。

コメント主曰く、このレストランは西洋式を勘違いしたタイ人がやっているレストランなんじゃないか、と。

勘違い、という言葉をめぐって、すこし考えてみた。

そのコメントには、実はその逆でタイ料理を「勘違い」したデンマーク人がやっているレストランなんですよ、と返答しておいた。

勘違い、という言葉に「」をつけたのは、もちろん彼らが本当に勘違いしているわけではなく、オリジナルのタイ料理を意図的に換骨奪胎していることを言いたいがためだけど、思うに「」がつくのと、つかないのとで、いかほどの差があるだろう。

意図的にやれば創造で、無意識にやれば勘違い。なんだろうけど、両者の違いって実は微妙。

ここまでの正直な感想としては、なにかタイ料理が分子ガストロノミーの「ネタ」になっている感じ。

西洋目線のオリエンタリズムにもとづいた料理、って言ってもいいかも。

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レッドカレーのアイスクリームに、ホワイトアスパラガス。

白いムースもアスパラ味だった気がする。

うーん、もう少し精度の高い盛りつけをしてほしい。

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セロリのひらひらの下には、

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「イエローカレー」と蟹の身。これと交互に、一緒に出た緑色の爽やかな風味のジュースを。

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脱構築パッタイ。エビ味のヌードルに「パッタイソース」。

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さっきと同じシリーズのクラフトビール。

やはりラベルのデザインがオリエンタルポップなニュアンスで、ちょっと不思議。

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骨の上に茄子かなにかのピュレとケープムー、カリカリとハム、というこれまた不思議なスナックなどをはさみ、

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メインは、ハーブとオイスターソース風味の牛肉。

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牛肉はタマネギで作ったというカリカリの下。肉はレアにローストしてからソースと合わせてある。この料理にはジャスミンライスが添えられている。

コース中、ブレッド的なものは出なかった。

さてさて、西洋人がやっているタイ料理レストランということで、同じくバンコクで営業している「ナーム」と比べると、「スラブア」は180度逆向きの方向性だ。

「ナーム」が西洋的なアレンジを排除したオーセンティックなタイ料理を標榜し、タイ料理そのものの洗練や体系化を目指しているのに対し、こちらはさっきも書いたように、タイ料理はあくまで分子ガストロノミーの「ネタ」っぽい。

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デザート一皿目。

パッションフルーツのジュースをかけると、わたあめが溶けて、下のグラスのアイスクリームとともにすべてが混ざる仕組み。

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二皿目。

花の香りをつけた白いアイスクリーム、ソルベ、メレンゲなど。

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三皿目。

バナナケーキとアイスクリーム(何味か失念)。下に敷いてあるのは凍ったココナッツクリームと生のココナッツのフレーク。

さきほどの「ネタ」の話の続き。

バンコクに「ガガン」というレストランがある。ここはインド人シェフがやっているインド料理の分子ガストロ版。

以前、本ブログでもリポートしたけれど、ユーモアがあるというか、インド料理そのものに対する批評性を感じる。さらに、驚きや笑いもあってエンターテイメントとして結構楽しませてくれる。

つまりインド料理を「ネタ」にして表現していることがシャープ。

「スラブア」は、そのあたりのピントがどこに合わせてあるのか、(よ)にはよくわからなかった。

こういう精度の高さを要求される料理を出しているわりに、スタッフのサービスがゆるいのも、そう感じさせる一因かも。

ここで大胆な仮説を。

一度利用したきりのレストランだから、あくまで仮説、というか妄想です。

先ほどのクラフトビールのラベルだが、漢字を使用する日本人として、明らかにネイティブが書いたと思えない「虾饺」の文字には、多少の気恥ずかしさを感じる。

さらに似たような文化ギャップ現象として、例えば「ドラゴンロール」とか、アメリカ式に曲解したスシのような料理に慣れるには、日本人として多少の時間がかかるものである。

これと同様の感覚で、このレストランのタイ人スタッフは、自分たちが出している不可思議なタイ料理に対して、実はほのかな気恥ずかしさ、違和感を感じているのではないか。なんとなく、納得できないというか。

だから、どことなくあいまいなムードにレストランが支配されている。

あくまで仮説ですよ。

※前述の「ガガン」では細かいタパスが連続したあとに出る、カレーやナンのメインコースに「~ Food at last!!!! ~」というタイトルがついていた(笑)。自虐というか、客観というか。

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タイ人は外国人のタイ料理に対して、どんな感情を抱くのだろう。

そのあたりのねじれを味わうために、もう一度訪問してもいい。かもしれない。

<2014年8月>

(よ)

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by brd | 2014-09-20 22:28 | タイ | Comments(6)
Commented by tanukidaponta at 2014-09-20 23:43
こ、こ、これは理解するのが難しいポン...
分子レベルと言うのか、原子レベルにして再構築かも...

前回の流れだと、タイ料理の「基本」は使われていたかと思うポン
(ミニチュアとか、一部を他の食材に置き換えるとか)

日本式タイ料理というのは、その「基本」は忠実に守っていて、説明を求められたときに「○○を使っているから」もしくは「こういう系統の香辛料(調味料、食材)を使っているから」タイ料理なんですよと言えるようになっていると思うポン

もしかすると、例えば牛肉カリカリについては、「オイスターソース」をタイ風と言うのか、それとも「レアの牛肉」はラープのDNAを引き継いだとかいうのかもしれないポンし、キュウリとイカはヤムのDNA(え?海岸のイカ焼きポン?)を拝借しているのかもしれないポン(笑)

と、書いたポンが、実は「カレー」だったり「トムヤム」だったりを使っているポンで、少~~しだけ分解するとこんな料理になるのかと、文章を書いているうちに納得してしまったポン(笑)
Commented by tanukidaponta at 2014-09-20 23:44
【続き】

(よ)さんが指摘しているように、一番の問題は店員だと狸田も思うポン

これを、デンマークの地で、デンマーク人が自信を持ってサーブしたら、かなり素晴らしい「タイ料理」になる可能性があるポン
ψ(`∇´)ψ
Commented by brd at 2014-09-21 01:27
ポン!

そうそう。デンマークでは、こういうものなりに、もっとちゃんとしている可能性はあります。

もっとずっと過激な料理だったはずなのに、タイ人が要らん手加減を加えて、意味わからなくなっている可能性を感じます。

基本的にこういう店の料理は、もう閉店してしまったスペインの「エルブジ」という店のコピーで、フォアグラを粉にしたり、焼き野菜の味がするゼリーとか、液体であるはずの素材を個体にしたり、その逆とか、泡にしたりとか、凍らせたりとか、客の脳内に構築された当たり前の食べ物の記憶を揺さぶって遊ぶようなコンセプトが主だったと思います。

レッドカレーのアイスとか、パッタイの料理とか、まさにそういうののコピーです。アイスを食べたらレッドカレーだ!とか、なんか変な麺料理を食べたらパッタイの味だった!みたいな。

そういう意味では、コーンポタージュ味のガリガリ君には非常に注目していました(笑)。

話を戻すと、逆に疑問なのは、デンマーク人がレッドカレーやパッタイの味を知ってるがどうかわからないから、その仕掛けが本店でちゃんと通用しているのか? という、また別の問題が生じますよね。

うーん・・・^^;

(よ)
Commented by Lunta at 2014-09-21 11:28 x
メイン料理はどんなだろうと楽しみにしていましたが、やっぱりエルブジのコピーですねえ(って、エルブジに行ったことがあるわけではありませんが。)
どうもこういうのは遊びっぽくて、それならおっしゃる通り、料理だけではなく道具立てもすべてコンセプトを体現していないと中途半端になってしまうのでしょうね。
味についての感想がないのも気になりますがいかがでしたか。
実は来月、同じ人気投票で世界No.3とかいうイタリアのレストランに予約を入れてあるのですが、このランキングの信頼性はどうなんだろう。
Commented by brd at 2014-09-22 01:16
Luntaさん

なはは。(よ)もエルブジなんて行ったことないんですけどね^^;

でもエルブジ以降、料理というジャンルが別の領域に突入してしまったという感覚は理解しているつもりです。こうやって料理をいじり倒すならば、いじり倒すその理由が必要なんですよね。なにを表現したいのかという必然性みたいな。だから、もう半分芸術みたいなものです。でも、(よ)は「なんちゃってエルブジ」も、それはそれで楽しめてしまうので、つねにユルくかまえております(笑)。

味は・・・それなり美味しいと思いますが、印象に残ったのは塩の強さかな。たとえば、パンやライスがあればオッケーな塩辛さでも、料理単品で食べさせられるとつらい、そんな塩の強さを感じる料理が多かった。あと、タイ料理を標榜するなら、もっとタイ料理におけるハーブやスパイスの独特の感覚を、もっとデフォルメして拡張したような料理とか期待していましたが、そのへんは期待外れだったかな。普通です。

Commented by brd at 2014-09-22 01:16
つづき

> 実は来月、同じ人気投票で世界No.3とかいうイタリアのレストランに予約を入れてあるのですが、このランキングの信頼性はどうなんだろう。

フランチェスカーナ、うらやましい!
ランキングの信頼性、どうなんでしょうね。

僕がこの種のガストロノミーレストランで(行ったことのある店のうちで、ですが)本気で椅子から転げ落ちるほど感動したのはバスクのムガリッツなんですが、エルブジなきあと、スペインだとカンロカとムガリッツの評価がずっと高かったので、いちおう信頼してます。

ただ、やっぱりアンチミシュランっていうか、アンチフランスというか、そういう政治色みたいなの感じませんか? あと、アジアのチャートで、ナームとナリサワ入れ替えたり、ナームは好きですけど、他意を感じないわけでもないです。

(よ)


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