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富山 : 下関崇子×仲有紀 トークセッション「100年カレー」 日本で進化するカレーとタイ料理

All About「毎日のタイ料理」でガイドをつとめるタイ料理家の下関崇子さんと、富山県氷見市の人気カレー店「ひみつカレー」の仲有紀さんのトークセッション「100年カレー」を企画しました。

映画『100年ごはん』(大林千茱萸・監督)の富山での上映に併催される食イベント「富がえりのレシピ」内の催しとして、7/26(土)に「フォルツァ総曲輪」で行わせていただくことが決まっています。

富山とカレーといえば、先日『dancyu』7月号カレー特集巻頭で、「富山に行ったら、そこはパキスタンだった。」とのキャッチとともに、パキスタン料理店「カシミール」が紹介されたりして、いまかなり熱いことになってますね。

さらに、下関崇子さんとのご縁は、(よ)が参加した「ヤムヤム富山」が始まり。このときのシェフが下関さん、そして富山食材のコーディネートを担当したのが「富がえりのレシピ」主催者の田中美弥さん。だから、こういう形で下関さんと一緒に富山に行くことになったのは、偶然じゃない。

ヤムヤム富山で下関さんが考案した、富山食材と富山の郷土料理にインスパイアされたタイ料理が面白くて、美味しかった。これもトークセッションでぜひ紹介したい。

富山 : 下関崇子×仲有紀 トークセッション「100年カレー」 日本で進化するカレーとタイ料理_e0152073_4451620.jpg

大門素麺のカノムチン。

さて、下関さんの1万字インタビューを掲載した『ferment』の中でも話題になっているけれど、旦那さんがタイ人(ムエタイ選手)で、日本にいながら家庭料理としてタイ料理を作っている下関さんにとってタイ料理は日常だ。さらにタイでの豊富な経験も反映して、下関さんはタイ人に近い味覚をお持ちに違いない。

下関さんは「本物のタイ料理以外は認めない」なんて頑固なことは決して言わない。言わないけれど、ある部分は、とてもごだわりを持っている

例えば、いま大人気のタイ料理「ガパオライス」。

ライスに目玉焼きとともにのせる「ガパオ炒め」に関して、面白いエピソードがある。

富山 : 下関崇子×仲有紀 トークセッション「100年カレー」 日本で進化するカレーとタイ料理_e0152073_114140100.jpg

ある日、ガパオが切れていたので、イタリアンバジルを使ったみた。でも、旦那さんは「こっちの方が美味しい」とか言って嬉しそうに食べている。だから「代用食材でも全然オッケー。タイ人が美味しいって言ってるんだし」と笑う下関さん。

でも一方で、ガパオ炒めにスーパーで売っている挽き肉を使ったら、「これはダメ」と旦那さんからクレームがきたという。

タイ人である旦那さんの反応に、下関さんは敏感だ。決して、スルーしない。

どうやらタイ人の旦那さんにとって、「挽き肉でガパオ炒め」は全然自分のイメージと違うらしい。ガパオ炒めに使う肉は、ミンサーで挽いたものではダメ。包丁で粗く叩いたのじゃないと、ガパオ炒めと認められないらしいのである。

イタリアンバジルはオッケーでも、挽き肉はNG。

下関さんは、こういう感覚に注意深く注目する。

料理教室などでガパオ炒めを作るときも、決して挽き肉は使わない。ちゃんと、塊の肉を包丁で叩いて使用する。

All Aboutのレシピも参照してみてください

例えば日本人にとって、四角い豆腐の一辺が1センチだったら、もうそれは「冷奴」とは呼べない。でも、3センチだったらギリギリ「冷奴」と認められるかもしれない。そんな感覚に近いのかも。

タイ料理の代用食材を考えるときは、海外に住んでいるタイ人の料理ブログを検索して、何を使っているか調べて参考にしたりするそうだ。なるほど納得である。

タイ料理とは何か。

それは料理の先生が知っているわけでもなく、教則本に書いてあるわけでもない。タイ料理を作って食べて、毎日生きているタイの人たちの舌と経験と感覚の中に生きているのである。

よくある単純な「本物志向」みたいな姿勢じゃなく、その向こうにある「生きたタイ料理のかたち」を探る姿は、なんとなく編集者っぽいなと思ったりもする。

もともと下関さんはライター業もされているし、著書では編集者も兼ねていたりするので、それも不思議じゃない。下関さんの、そんなところが面白いと思っている。

さて、トークセッションのもうお一方「ひみつカレー」の仲さんとの出会いは富山県高岡市でのイベント「スパイスとコーヒーで心もからだもぽっかぽか教室」だった。

教室は参加者それぞれのオリジナルガラムマサラを作ってカレーにかけて食べてみる、という趣向だった。

前ふりで、仲さんが参加者に問いかけた一言がある。

「日本にもガラムマサラみたいなミックススパイスがあるんですが、なんだかわかりますか?」

答えは、

「七味」

なるほど、たしかに。七味唐辛子は唐辛子に、山椒、麻の実、陳皮、胡麻、紫蘇、海苔などなどを混ぜ合わせた日本のミックススパイス。日本のガラムマサラだ。

そして、教室終了後「ひみつカレー」のカレーをいくつかテイクアウトさせてもらって夕飯に食べたのだが、その中のひとつに「牛筋とゴボウの和風カレー」というのがあった。

富山 : 下関崇子×仲有紀 トークセッション「100年カレー」 日本で進化するカレーとタイ料理_e0152073_448083.jpg

牛筋とゴボウ、といえば、居酒屋のおつまみで出てきそうな煮込み料理だ。

煮込みには七味唐辛子をかけたら美味しい。これ、常識。

さて、その七味唐辛子をガラムマサラなどインドのスパイスに置き換えたらどうなるか?

そう。カレーになる。

なんと、日本の牛筋煮込みは、カレーの親戚だったのだ。

もうひとつ気になったのが「卵とチキンのペルー風カレー」。

富山 : 下関崇子×仲有紀 トークセッション「100年カレー」 日本で進化するカレーとタイ料理_e0152073_4492153.jpg

この「卵とチキンのペルー風カレー」は、実はペルー料理の「アヒ・デ・ガジーナ」。鶏のスパイス・クリーム煮込みで、つまり、ほとんどカレーなのである。

ほとんどカレーなのではあるが、しかし、これをズバリ「カレー」のカテゴリーで紹介したのは仲さんが初めてなんじゃなかろうか。

ふつうはカレーだと思われていない料理を、カレーに見立ててみる。これは面白い。

こういった「見立てカレー」と、わりと普通な「タイ風グリーンカレー」がメニューに同居してるのを見て、なにかピンとくるものがあった。

スパイス料理を炭水化物と一緒に食べたら、それはもうカレーです。

仲さんは、そう言っていたけど、確かにそうだ。

日本人にとってのカレーとは、「スパイシー」「ごはんにかける」(ナンとかのパン系もあるけど)の二つに集約できる。逆に、この二点を満たしていて、かつ美味しいという条件で、どんどんカレーカテゴリーを拡大していくのは、かなり面白い。

麻婆カレーやラタトゥイユカレーまである。FBにあがる写真を見るたび食べてみたいと思う。

今回のイベントの中心となる映画『100年ごはん』は大分県臼杵市の土作りに関するドキュメンタリーだ。土を考え、水を考え、100年スパンで考えることで、食を救っていこうというサスティナビリティの思想が「100年」という言葉に表れている。

それをもじった「100年カレー」は、100年後のカレーについて考えてみようと思ってつけたタイトル。

日本という外国でタイ料理的なるものを探る下関さんと、カレー概念を拡大し続ける仲さん。

こと2人なら、きっと「料理の進化と変容」について、楽しいヒントをくれるに違いない。

そして、思わぬケミストリーが起こるに違いない(お二人は当日に初対面)。

トークセッション
世界の食文化に出会ってもっと美味しくなる
「100年カレー」
~富山発、スパイスとハーブをめぐるカレーの旅と未来~
出演:仲有紀(ひみつカレー)×下関崇子(タイ料理家)
日時:7/26 14:40~16:10
場所:フォルツァ総曲輪 4F ライブホール
料金:1000円

申込みはフォルツア総曲輪HPにて


(よ)

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by brd | 2014-07-21 05:01 | 富山


旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks


by brd

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