カレー&スパイス伝道師・渡辺玲さんのサザンスパイスでプライベートディナー その1

カレー&スパイス伝道師・渡辺玲さんのキッチンスタジオ「サザンスパイス」で、渡辺さんのプライベートディナーを主催した。

まず、一品目は

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アルチャナチャット。

インド風の豆サラダで、チャナダル(ひよこ豆)、ジャガイモ、大根、にんじんなどを、チャットマサラで味つけしてある。チャットマサラとは、未熟マンゴーの粉末と硫黄の香りがする岩塩などを合わせたミックススパイスだ。

全体に柔らかくなり過ぎないよう火を入れた食材のポリポリした歯ごたえが楽しく、次の料理への期待感がいやがおうにも高まってくる。

さて、このプライベートディナーの参加は今回で2回目。

まず最初に、渡辺さんのプライベートディナーとは何かを説明しておいた方がよいかもしれない。

いつもは渡辺さんの料理教室が開かれている、ここ西荻窪のサザンスパイスでは、教室がお休みの日に、渡辺さんご自身が作る料理を食べることでインド料理を学ぶ、いわば“食べる料理教室”を有志の集まりで主催できるのだ。

前回の様子は、こちらでリポートしているので、よろしければご一読を。

上記リンクの会に参加して味をしめ、なんとかあの素晴らしいディナーをもう一度、と渡辺さんにラブコールを送り続けた結果、各方面から引っ張りだこで多忙をきわめる渡辺さんになんとかスケジュールをやりくりしていただき、今回の会の実現となった。

ありがとうございます。

そもそも店を持たない渡辺さんの料理を味わう機会というのは、とてもレア。まれにインド関連のイベントで渡辺さんの料理をいただくチャンスもあって、そのスペシャルな美味しさのファンになった自分としては、こうして渡辺さんがこしらえるフルコースディナーをゆっくりいただける体験なんて、もう夢のよう、と言ったら言い過ぎかもしれないが、もう前日からニヤニヤドキドキ、不思議な多幸感につつまれながら西荻窪までやってきたのだった。

さまざま考えた結果、渡辺さんには「ちょっと珍しい感じの料理を取り混ぜてください」とだけ事前リクエスト。北か南か、も言わずにおいた。あとは、ぜんぶお任せである。

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アーンドラチキンピックル。

つまり、アーンドラプラデーシュ州風の鶏肉ピクルス。

インドではマンゴーやレモンのピクルスを料理のつけあわせにしたりする。ピクルスといっても「酸味の強いスパイス漬け」のようなもので、けっこう辛さもあり、ヨーロッパのそれとは別もの。瓶詰めも市販されていて、自宅の冷蔵庫にはシンガポールで買ってきた「レモンピックル」を常備。カレーに添えて楽しんでいる。

そして、なんとインドには鶏肉のピクルスまであるのだった。

このあたりがインド料理の醍醐味。「肉のピクルス」なる新たな概念を知ってしまうと、インド料理は掘り下げればさらに未知なものがありそうだ、と想像がふくらむ。いや、そうに違いない。

ところでピックル、インドでは複数系の「ピクルス」ではなく単数形の「ピックル」で呼ぶのが普通。このチキンピックルは、炒めた鶏肉をマスタード・シードなどのスパイスとレモンで一晩ほど漬け込むのだそう。

この種のマニアックな料理を取り入れる店も増えてきており、つい最近も都内のインド料理店でチキンピックルに遭遇したけれど、日本ではなかなか出会えない料理には違いない(渡辺さんのレシピはそのお店のレシピとは異なる)。リクエストに応えてくださっているのがわかり、とても嬉しい。

食べてみると、辛さと酸味と肉の旨味が重なり食欲をそそる。スパイシーチキンマリネ、みたいなイメージか。鶏肉の冷前菜。いや、前菜にしてはけっこうなボリューム感だ。お酒もすすむ。

お酒といえば、プライベートディナーの飲みものは各自持ち込みが原則。今回参加のみんなに案内を出すとき「ワインを持ち込む予定の人は、このページを見ると楽しいかも」と、渡辺さんが出ているサッポロのワインのページを紹介したら、ワインの持参率が高くなってしまった(笑)。

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都内の某カレー店に勤務の参加者は、メドックマラソンに参加するほどワイン好きの奥さんに、インド料理に合いそうなワインを選んでもらったそうな。それが上のボルドーの赤。シャトー・トゥール・カロン'09。ほどよい甘味と果実味とスパイシーさもあり、誰でも飲みやすそう。なるほどカレーにもマッチしていた気がする。

別の参加者は、ポルトガルワインの「ヴァスコ・ダ・ガマ」スパークリングの赤を持参。ヴァスコ・ダ・ガマといえばインド航路の発見というわけで、とてもオシャレなチョイス。実際、赤のスパークリングはスパイシーなアジア料理に合う。夏のイメージだ。

そういえば、前にランブルスコ+タイ料理をやってみた。非常にイイ感じだった。

いま自然派ワインに興味があるわが家からは、ル・フェルム・ド・ラ・サンソニエール プティ・ルージュ2011を。有機な味わいは、インド料理に合うような、そんな気もする。

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バーミセリウプマ。

南インドの軽食、ティファンの一種。あまりインド料理を知らない人にしたら、インドに麺料理があるなんて、これまたけっこう意外かもしれない。

マスタードシードのアクセントや、カレーリーフの香りがなんとも南インド的な感じがする。

調理法だが、バーミセリはまず乾燥した状態で炒めて、具と一緒に蒸し煮にするそうだ。

このバーミセリウプマに合わせるのが、

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トマトチャトニ。

チャトニというのは、日本でいうチャツネのこと。カレーやティファンに添える薬味のような存在だ。今回のトマトチャトはトマトにココナッツや香草もあわせてミキサーにかけてある。

これを、バーミセリウプマにかけて食べる。

うーん、南インド!

やっぱりカレーリーフの香りと、ココナッツのニュアンスだろうか。自分としては強く南インドを感じる、というか、南インドへの旅の記憶が呼び起こされる。

さきほどのチキンピックルは、このバミセリウプマに添えて食べてもよいそうだ。

自分のインド料理遍歴を考えると、そもそも南インドの「ティファン」なるカテゴリーがインド料理にあることを教えてくれたのが渡辺さんの著書だった。もっと言えば、インド料理というのは北と南で大きく違う、いや、広大なインドは各地に料理のバリエーションが無数にあって面白い、その認識自体を与えてくれたのが渡辺玲さんだったのである。

はじめてインドを訪れ、タミルナドゥ州へ向かったときのガイドブックは渡辺さんの『ごちそうはバナナの葉の上に』だった。

その流れで、なぜプットゥ(ケララ州名物のティファン)って、あんなにモロモロ崩れるんだろう、という話をしていたら、渡辺さんのキッチンにプットゥメイカーがあった。写真を撮らせていただくのを忘れてしまったのだが、こんな形の器具

変形したエスプレッソマシンみたいで不思議だ。上の筒のなかに材料のココナッツと米を入れて、下からの蒸気で蒸しあげるのだろう。この大それた器具で、たった1本のプットゥしかできないのも、ちょっと笑える。と思ったら、2~3本できるのもあるそうだ(リンクは渡辺さんのブログから引用させていただきました)。この器具の形も独特。面白い。

なんでわざわざ筒状に蒸すんだろう?

参加者の誰かが「むかしは竹筒で蒸していたんじゃない?」というと、渡辺さんが「そうなんでしょうね」とおっしゃっていた。

今回のメンツは、ブックデザイナー、フードアナリスト、タイ料理研究家、カレー店勤務、翻訳家、編集者などなどの8名で、みんな料理関係の話題ならなんでもござれ。

フードアナリストの女性は、偶然にも数日前に渡辺さんとお仕事を一緒にされていたそうだし、サザンスパイスに置かれていた渡辺さんの著書巻末の出版社自社広告にタイ料理家の方の著書が掲載されているという偶然まで発覚。

カレー、インド、アジア。

こういうキーワードで、みんなどこかでつながっている。

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パオバジ。

おお!これは存在は知っていたが、いつか食べたいと思っていたムンバイの名物料理ではないか。

マッシュポテトとトマトソースをあわせたようなものを、ナンなどではなく西洋式のブレッドにつけて食べる。現地ではかなりオイリーなパンが出てくるというが、ここでは普通のバゲットで。

これはメンバー全員に大好評!

たしかに未知なるインド料理の味というより、なにか食べなれたスナックのよう。すぐになじんでくる。ムンバイでも庶民的な扱いの一品だそうだ。たしかに、嫌いな人が少なそうな定番素材であるマッシュポテトとトマトソースの組み合わせは強力。

ギーをたっぷりつかってあるそうで、スパイスはカイエンペッパーとガラムマサラくらいだとか。けっこうシンプル。トッピングされた生タマネギが味わいのよいアクセントになっている。

もちろんカレーのカテゴリーには入らないような気がするし、ティファンでもない。メンバーからは「アメリカ料理でマッシュポテトにグレービーソースをかけて食べるのがあるけれど、それを思い出した」などの声も。ちょっと面白い。

パオ=パン、バジ=野菜、のことだそうだ。「パオ」はどこか中国語を思わせる。中国では包子(パオズ)で饅頭、面包(ミェンパオ)で西洋式のパンの意味だ。

このパオバジは、渡辺さんの近刊『スパイスの黄金比率で作るはじめての本格カレー』にも、「マッシュポテトとトマトのカレー」として、簡略化されたレシピが掲載されている。

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マハーラシュトラ風フィッシュマサラ。

トマトベースのグレービーに、魚はメカジキ。

これもバケットと一緒に食べると美味しい、と渡辺さんのサジェスト。たしかにトマトの酸味を感じる濃厚なカレーにはパンが合う。今回は出なかったけれど、きっとナンやチャパティなどインドのパン類にもマッチするに違いない。

マハーラシュトラといえば州都にムンバイを抱える州。インドは、実はデリーとタミルとケララにしか行ったことがないけれど、さきのパオバジも食べたいし、ムンバイには近いうち訪問しなければ(一晩トランジットしたことはある)。

さらにムンバイといえば、渡辺さん曰く、グジャラートターリーが美味しいのだとか。グジャラート州はインド西部、マハーラシュトラ州の北に位置する。渡辺さんがムンバイで体験したグジャラート風菜食ターリーのリポートは、こちら。

上記リンクの記事にも書かれてあるが、グジャラートターリーでは食事の前半に甘いものが出されたりする。たとえばインドの一般家庭に訪問した際など、食事の最初にデザートが出てきたりしてビックリすることがあるとか。こういう食文化の相違に思いをはせるのが好きだ。

さて、次は本日のメインのカレー。

つづく。

<2013年7月>

(よ)

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by brd | 2013-08-02 07:48 | 東京のインド | Comments(4)
Commented by Lunta at 2013-08-02 14:06 x
珍しいインド料理ばかりでむちゃくちゃうらやましいお食事会!
渡辺さんと行くインド食べつくしのツアーも行ってみたいものです。
こちらのブログをブックマークでリンクさせていただきました。
これからもおいしい世界のご紹介、楽しみにしております。
Commented by brd at 2013-08-05 00:01
Luntaさん

もしよければこんど機会があればお誘いします~。

渡辺さんのツアーは、行ってみたいですよね!
でも、さすがにスケジュールがあれだけ自由にならないし、
先立つものも・・・。

なので、渡辺さんのツアーが訪問したお店をチェックして
こんど自力で行くつもりです(笑)。

リンクありがとうございます!

(よ)
Commented by タヌ子 at 2013-08-05 08:56 x
この会に同席することができた人はラッキーですね。
普通のインド料理のお店ではなかなか味わえないものばかり。
まともなインド料理すら食べられないフランス在住者としては、そんなラッキーな方々への嫉妬心がメラメラ燃え上がります(笑)
インド料理の麺、確かに珍しいですよね。
細切れビーフンっぽい食感なのかしら。
カレー味のビーフンを作って満足することにします。
Commented by (よ) at 2013-08-05 16:39 x
タヌ子さん

自分もとてもラッキーだったと思います!

インドの「バーミセリ」は・・・たぶん、以前のコメントでも書いたパリ北駅の東側を走るFaubourg Saint-Denis通り沿いの南インド&スリランカ街で買えるような気がします。なければカッペーリニでいいかも(笑)

スパイスは、マスタード・シード、カレー・リーフ、ウラド・ダール、ヒング、ショウガ、タマネギ、唐辛子・・・かな?

ヒングは、プラスチックのケースに入った粉で、なんか玉ねぎの腐ったようなかなり異様なニオイがするのですが、これを料理に少しだけ振り掛けると、不思議なことにコクというかうま味というか・・・風味が豊かになります。

いつだかは、旅の最初のほうのシンガポールのインド人街でヒングを買ってしまい、そのあとマレーシア、タイと、ずっとヒングの香りとともに旅していました(笑)。そのくらい、匂います。


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