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『料理通信』秋田発見ツアー その5 : 横手発酵物語「羽場こうじ店」「天の戸 浅舞酒造」

『料理通信』秋田発見ツアー、前回のつづき。最終回。

「旨めもの研究会」イチオシの大曲納豆汁を堪能した一行は、一路、横手市へ。

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中華そば「マルタマ」で、ご当地B級グルメ。

やったら広々した店内で、本日2回目となるランチを。

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あっさり透きとおった魚介スープに、太さが不均等な感じの細ちぢれ麺。具はシンプル。麩が入ってる。

納豆汁とご飯のあとでも、わりとスルスルっといけてしまった。食後感はラーメンというより、かけそばみたいな和のイメージ。たしかに、ラーメンというより「中華そば」と呼ぶのがふさわしい。

横手市十文字町は中華そばの街で、こういう類の中華そばを出すところがほかにも何軒かあるらしい。横手といえば、B-1グランプリでも優勝した「横手やきそば」が知られているけれど、これもなかなか。そのほか秋田のB級グルメといえば、二種類のカレーをあいがけするカレーライス「神代カレー」も食べたかった。ま、これは次の機会に。

「マルタマ」は中華そば以外にもいろんなメニューがあって、「焼肉中華」「ギョーザ中華」「たぬき中華」などが気になる。「中国ラーメン」は「中華そば」とどう違うのか、なんて言ってるうちに、またまた移動の時間がやって来た。

次なる目的地は、おなじ横手市にある「羽場こうじ店」

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麹と、麹をたっぷり使った味噌をつくる老舗だ。

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仕込んだばかりの味噌を見せてもらった。

味噌作りでは、大豆1:麹1の比率が普通だそうだが、ここでは大豆1:麹3。もっと麹が多い場合もある。三重麹味噌と言って、麹の風味が豊かになり、甘くまろやか。

その麹。

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できたばかりのを、麹室から出して見せてくれた。

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綿のように真っ白でほわほわの菌糸がおおいつくした麹は、なんだかとても愛おしく、どこか神秘めいてもいて、一同「おぉ・・・」という感じ。しばし無言で見とれる。

ちょっと、つまませてもらった

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口に入れてかみしめると、もろもろっと米がくずれ、独特の甘味が口内に広がる。これだけで、すでに美味しい。

よい麹は、菌糸が米の中までしっかり入り込み、米自体が縮んでいくそうだ。

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米に麹菌をうえつける粉状の種麹も見せてもらった。何種類もの種麹があり「これを間違うと、大変なことになるんですよ」とのこと。酒造用、味噌用など用途によってそれぞれ菌の種類が違うわけだ。

麹蔵からショップへ移動。もろもろのテイスティングタイム。

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甘酒は、さすが麹の香りが活きていて、よくあるベタっと甘い甘酒とは違う感じ。

「喜助みそ」三種、味くらべ。

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もちろん自慢の味噌で作った、

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お味噌汁も。

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さらに、リンゴの塩麹煮、大根のなた漬け、茄子の三五八漬け(写ってないけれど)、みそ漬けなど、もう麹三昧、味噌三昧。

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塩麹でつけた野菜の刻み漬け。

これだけ堂々たる発酵由来のおかずたちを目前にして、なにか足りないものが・・・。そう、やっぱり美味しいあきたこまちのご飯でしょう!

というわけで、気をきかせてくれた羽場こうじ店さん、しっかりご飯を炊いて用意してくれていた。

が・・・、納豆汁+ご飯→中華そば、のコースで相当にお腹いっぱい状態のツアー一同。

いや、自分はここでご飯、ぜんぜん大丈夫なんだけどなあ。みんな、ダメ?

どうしようかと悩んでいたら、昨日から同行してくれている羽後交通のバスガイドさんが夕食用のおにぎりにしてくれることに。なんて優しいこと!なんて気のきくこと!

あとは時間ギリギリまでショッピングタイムとなった。

そのまま料理に使ってもいいし、塩麹にしてもいいし、甘酒にしてもいい「羽場のこうじ」はもちろん、「喜助みそ」は絶対に買っていこう。

そして、隠れた名品が「たまり」。味噌造りの副産物だと思うが、なかなか出ないものらしい。ラベルも貼ってない瓶で並んでいたのを見つけ、これもすかさずゲット。自宅で試してみたら、これがまあとろんと濃厚で、ばつぐんに美味い! 醤油の代わりとして、おひたしや冷奴など、なにに使っても絶品だった。

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バスを見送ってくれた羽場こうじ店のみなさん。

さて次は、横手発酵物語、後編。

本ツアー最終見学ポイント、

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「天の戸」の浅舞酒造へ。

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なんとなく高島忠夫似、森谷杜氏。

この杜氏の話が、もう抜群におもしろくて、含蓄深くて、チャーミングで、まさに本ツアーのクライマックスにふさわしい。

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部屋のライトを落としてスクリーンに映像を投影しながらのレクチャー。ツアー終盤、そろそろぐったりしているはずの一行にも目の輝きがもどり、ぐいぐいと引き込まれていく。

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農薬を減らした結果、酒米の田んぼには虫が増えた。

虫が稲に巣をはっている。ふつう、こんなふうには目視できないけれど、天候の妙で巣に水滴がつき、反射する光をとらえた瞬間。

いかにも、米づくり、そして酒づくりのワンシーンといった美しい風景。

写真は杜氏本人の撮影。上手だ。

天の戸の酒は、蔵から半径5キロ以内の田んぼで収穫された酒米を使用している。まさに日本酒テロワール。

その大きな意味は、水。

酒米を育んだ水と、酒の仕込み水が、同じ水源であるということ。

で、その半径5キロをビジュアルでイメージするため、気球に乗って酒蔵の上空から地表を撮影。

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そして、半径5キロの円を描いて、こうしてみんなに見せる。

なんだか、お茶目(笑)。

と同時に、アーティスティック。

美味しい酒を造る杜氏、というだけにとどまらない独特路線の才能を感じ、一発でファンになった。

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さしすせそ(=砂糖・塩・酢・醤油・味噌)を、カッコ(=酒粕と麹)でくくる。

かっこさしすせそ。

つまり、酒造りに欠かせない麹と、酒造りと切っても切れない酒粕は、砂糖、塩、酢、醤油、味噌の5大調味料につぐ、第6、第7の調味料である、と。

話はすこし脱線するが、秋田弁で母さんのことを「あば」という。

そして「あば」よりもうすこしレベルの高い奥さん、というか、行事のときに晴れの日の料理を代表して作るような女性のことを「じゃっちゃ」というのだそう。

その「じゃっちゃ」の味つけを覚えた一般の母さんたちが、同じを味を各家庭に広めていくという習慣が、かつてあったそうで、そのときから麹で作った甘酒で甘味をつけたり、酒粕をかくし味にしたり、という手法があったそうな。

秋田はもともとは味醂文化ではないそうだ。

そこで、麹と酒粕が秋田の味を作ったのじゃないか、と。

うーん面白い、かっこさしすせそ。

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酒造りを左右する大事な水を味わう。

もちろん美味しい。

そして、この水場自体が、神聖な場所であるかのように神々しいオーラを放っているではないか。

新幹線の時間が恨めしい。急ぎ足のレクチャーを聞きながら、天の戸のお酒を試す。

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黒麹で仕込んだ「KURO」は一口ふくんだだけで、おっ?となる美味が広がる。酸が強調された今まで体験したことのない酒の味。

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山芋の酒粕漬け。

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チーズのような豆腐の酒粕漬け。

あぁ~もっとゆっくり飲んで、つまんでいたい。

でも、もう時間がないらしい。

新幹線に間に合わないと、まずい。

あたふたと、お酒を2本、そして酒粕、ではなく「酒香寿」をゲット。

この「酒香寿」がまたほんとに美味しくて、自宅でわさび漬けにしてみたら、かなり良かった。

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おみやげにもらった酒まんじゅうは、こまち38号にゆられつつ、ほんとんど食べてしまった。

バスガイドさんが握ってくれたおにぎりも、美味しくいただいた。

そうそう。

バスガイドさんといえば、天の戸から大曲駅までの車中でやったジャンケン大会の賞品として、自宅で実ったという渋柿をくださった。やわらかく熟すまで放っておいたあとに冷凍したら柿シャーベットとして美味しく食べられるというアドバイス。そのとおりに実行したら、本当にとろみのある濃厚な氷菓となって美味!

とにかく2日間でまわれる場所をすべて網羅しようと目論んだ、良い意味で欲深き秋田発見ツアーも、これでおしまい。

ふだん似たようなせわしない旅をしていたりするので、個人的にはまったく問題なく、むしろ良いペースだったのだが、みなさんはどうだったのだろう。

美味しいものをいただきながらも、森谷杜氏をはじめ、やっぱり人だな~と。ツアー一同を手厚くもてなしてくれた秋田の人たち、そして秋田県庁の方や、ツアー会社の方、そしてもちろん、料理通信のスタッフ、個性的な参加者のみなさん。とにかく人の魅力にあふれた旅だった。

個人的なことを言えば、2012年11月は、どういうめぐり合わせか、申し合せたような秋田月間だった。

本ツアーの翌週には、日本各県の食材でタイ料理を作るイベント「ヤム!ヤム!ソウルスープキッチン」が、なんと秋田特集。毎回、主催者が該当地域を取材して出会った生産者の食材をイベントで使用するが、地域的に男鹿から県北メインの食材チョイスで、偶然とはいえ、『料理通信』のツアーとは見事にかぶっていない。これもある意味、面白いなあと感じたり。

いずれ自分の足でも旅してみたい、秋田。

いま雪下ろしが大変そうですね。

みなさん、新年も元気でやってますか。

またお会いしましょう!

<2012年11月>

おわり。

(よ)

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by brd | 2013-01-07 22:27 | 秋田 | Comments(0)


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