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東京カリ~番長 水野仁輔×「料理通信」 夜中のトークショー

Attended the talk show of Mizuno Jinsuke, an Indian cuisine specialist, held at the Tsutaya book store, Daikanyama, Tokyo by "Ryoritsushin", a monthly magazine specialized in food. The event started late in the night from 22:00 P.M., probably reflecting the feature article of the new issue titled "Midnight Kitchen" featuring a curry recipe he recommends to cook at midnight.. [November, 2012]


『料理通信』 2012年12月号。

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第二特集は、真夜中のキッチン晩秋編。

本特集で「赤ワインでじっくり煮込む牛肉カレー」を担当した水野仁輔さん(東京カリ~番長)のトークショーが、本誌発売日の11月6日に代官山蔦屋書店で行われた。

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題して、

東京カリ~番長 水野仁輔氏×「料理通信」
夜中のトークショー


なんとイベント開始が夜の10時。

仕事を終えて食事してから、あるいは、かるく一杯やってからでも来れる大人の時間帯。

なんとなくリラックスした感覚。

終電が気になるけど(笑)。

トークの相方は「料理通信」副編集長の伊東由美子さん。

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もともとクラブのイベントでカレーを出していた目標も計画性もない軟派な集まりが「東京カリ~番長」。一方、マジメにインド料理を探究するために日本インド料理界のサラブレット3人と組んだ硬派ユニットが「東京スパイス番長」、などなど自己紹介めいた内容からスタート。・・・したかと思えば、流れるようにスムースな水野さんのトークはいつのまにやら仕事の本質、いや人生の本質を突くアフォリズムへといたる。

「今夜は料理関係の仕事に就くオーディエンスも少なくないので、ぜひなにかアドバイスを」

という司会者の質問に投げ返されたのが、ずばり、

水野仁輔 3カ条

その1.誰もやっていないことをやる

その2.自分が面白いと思うものを表現=アウトプットしていく

その3.決してやめずに継続する


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その1に関して、水野さんはカレーに関する仕事しか受けないと決めているそうだ。パスタのレシピ依頼とか、カレー以外の仕事がたくさん舞い込んだ時期もあったが、全部ことわってきた。

そして、現在はカレーとワインの関係を突きつめるため、酒はワインしか飲まないとかたくなに決めているという。

ワインは、まったくのビギナーだとか。

たとえば居酒屋で全員生ビールで乾杯、というときも一人だけワインと決めている。

しかも、できればフランスワイン。

フランスワインだけ、と狭く限定することで、なぜかだんだん楽しくなってくるんだそうな。あえてフィールドを限定することによって見えやすくなることも、確かにあるかもしれない。

ところで、水野さんはビジュアルの記憶力に優れている。

飲んだワインのエチケットは全部集めている。

ワインの名前や生産者は覚えられなくても、エチケットのデザインは忘れない。店でリストを見てピンと来ない場合は、ボトルさえ持ってきてもらえば、飲んだことのあるワインかどうか判断できる。だから、店では必ずボトルを見せてもらう。

DJをやっていたときにアナログディスクのジャケットを見ただけでサウンドが頭に浮かぶ、その感覚と同じだそうだ。

そうそう、会場では「料理通信」の編集部からワインがふるまわれた。

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日本産の甲州、マスカットベリーAの赤とロゼ、ブルゴーニュの赤。

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ひとときワインでなごんだ。

ワインスクールに行ったら負け。という話もおもしろかった。

水野さんのワインは自己流。

でも、誰もがワインスクールを勧める。スクールのメリットは、個人でボトルを購入せずとも数多くのワインがテイスティングできる効率の良さだ。

でも、効率って何?

気に入らなかったワインも一度抜栓したら自分で全部飲みきらなきゃいけない。もちろん、そのボトルは「美味いかな、どうかな」と案じながら身銭を切って購入した一本。そんな、みずからの身を切ってやる感覚がなくて、いったい何が身に着くというのか? と昔気質な職人のようなことを言う水野さん。そのルックスの爽やかさ、トークのスムースさと相反する、頑固なこだわりに魅力を感じた。

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さて、誰もやっていないことをやるためには、みんながすでにやっていることを知らなければならない。だから、日々出版されるインド料理の本、カレーの本は、ほぼすべてを購入している。

料理関係で共通して売れているのは、レシピ本だ。でも、水野さんの出版のアイデアはレシピ本にとどまらない。

ここで生まれる疑問。

おもしろいから、売れるのか?

売れている本=おもしろい本か?

自分がおもしろいと思うのに、売れない本は、実はおもしろくないのか?

そこで、三カ条の2.である。

自分が面白いと思うものをアウトプットする。

基本的に商業出版社では、売れない本は出せない。

でも、出版社が出してくれない企画をあきらめて、いいのか?

いいわけがない。

だから、自分で出す。

自分がおもしろいと思う企画は、出版社が出してくれなくても、必ず世に出す。

そこで立ち上げたのが、ご自身の出版社「イートミー出版」だそうだ。

どんな本を出しているかは、上のリンクを見ていただくとして、トークショーで配られたフライヤーに「今後刊行予定のタイトル続々」という欄がある。

そこには、『本物よりおいしい偽者レシピ』『老舗カレー店をめぐる冒険』『カレーよ、さようなら』『オニオンカラーチャート』『勝手にご当地カレー』『フランスワインとインド料理』『WHOLE CURRY CATALOG』『カレー遺産』『タモさんカレーの謎』・・・などなどなど、ざっと20冊以上の未刊行本の企画が並んでいる。とてもおもしろい。

全部本気か。一部ジョークか。いやたぶん、全部本気の企画なんだと思う。そして、きっとすべて刊行されるのだろう。全部、読みたいし。

イートミー出版の刊行予定企画タイトルを見て、ふと思い出したのは、かつて坂本龍一さんが本本堂という出版社をやっていたときに出した、『本本堂未刊行図書目録』。

一瞬、高尚なギャグなのかなとも思ったが、そういうことではなく、これは本と出版システムへの挑発・挑戦だったのであり、そういう意味では、なにか近しいものを感じてしまった。

おもしろいかおもしろくないかは、自分で決めればいい。

おもしろくないとジャッジされたことでも、10年続けていたらおもしろくなるかもしれない。

カッコイイね~。

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でも商業出版だって、もちろん捨てたものじゃない。

こっからは水野さんの話ではなく、ボクの個人的な見解。

10年前くらいにBSE問題が発生したときに、現在『料理通信』編集長の君島佐和子さんがやっていた当時の『料理王国』は、あえて「牛肉、食べてますか」という特集を組んだ。

どこの世界でもネガティブな話題や、あまりにもシリアスなテーマは避けるもの。それこそ、売れないから。でも、あえて食の世界が直面している大問題に真正面から挑んだその気骨に、なんだか惚れてしまった。

ながらく『料理通信』を愛読している、理由のひとつでもある。

こういう話、書いているときりがない。

個人的な見解、終了。

さて。

また水野さんの話に戻ります。

カレーの決め手はスパイスの配合、と思われているけれど、実はそうではない。

水野さんのたどり着いた結論は、脱水。

つまり、カレーを美味しくするか否かは火入れのテクニックがものを言うのだ。いかに食材を脱水するか、火によって水分をとばしていくかにかかっている。そんなテーマも興味深かった。

なんと、この水野説とまったくおなじことを『料理通信』2010年7月号「たとえば、落合さんのレシピは、???が違う!」特集で、落合務シェフが言っていたのだった。

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表1の「???」には、「水分の飛ばし方」が入る。

カレーにおいて自身が独自にたどり着いた結論と、イタリアンのスターシェフが同じことを言っているわけで、これを読んだときは心底驚いたという水野さん。

さらに、火入れの達人として話題にのぼっていたインド料理人が、西新宿「コチンニヴァース」のシェフ。たしかに、真夏なんて汗ダックダクで鍋を振っているシェフの姿を見た覚えがある。

さらに、この夜は気になるトピックがいっぱい。

たとえば、「東京スパイス番長」が行っているインド探求ツアーでは、近々インド・ベンガル地方を訪れる予定だそうだ。そのツアーでは、みんなで魚を釣って料理する計画があり、水野さんは会場の代官山蔦屋で参考図書として開高健の「オーパ!」ヴィンテージ本を購入したんだとか。そんなちょっとイイ話や、真夜中のキッチンで水野さんはグールドのバッハを聴いている、とか、語りたい話はまだまだあるのだが、いつもの記事よりだいぶ文章量が増えてきたので、このへんで。

そうだ、三カ条の3。

続けてさえいれば賛同者が生まれ、出会いがあり、かならず世界が広がっていく。

むしろ、おもしろいことはやめられない。

カレーは、おもしろい。

水野さん、『料理通信』スタッフのみなさん、楽しい夜中のトークショーをありがとう!

<2012年11月>

(よ)

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by brd | 2012-11-11 00:00 | 本や映画 | Comments(0)


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