パリ : ケ・ブランリ美術館 Musée du quai Branly の非ヨーロッパ写真家展「フォトケ PHOTOQUAI」
~KL-Paris-Quimper #19~
#18のつづき。
イラクの写真家の作品。
サダム・フセインという名の、匿名性。
ランチのあとは、エッフェル塔の第一展望台を観光。
興味深い野外写真展が開催されていた。
いろんな国の写真家が、作品を出展している。
この写真展、エッフェル塔の近所にあるケ・ブランリ美術館 Musée du quai Branlyが隔年で開催している「フォトケ PHOTOQUAI」なる企画展。
今回のPHOTOQUAI 2011には、世界から46人もの写真家が作品を出展。写真家は全員、ヨーロッパ以外の人たち。写真展会場はすべて屋外で、ここエッフェル塔ほか、ケ・ブランリ美術館の庭、そしてセーヌ川沿いの遊歩道でも展開されている。
近所だし、さっそくケ・ブランリ美術館 Musée du quai Branlyへ行ってみることに。
徒歩数分。いきなり目に入ってくるのは、
壁に生きた植物が生い茂った、不思議な美術館の建物。
観光客にも大人気。
そして、
入り口はたくさんのテキストが書かれたガラスの壁で、向こうが透過して見える。
さらに中に入ると、
宇宙船のような、宇宙ステーションのような、大胆な建築に圧倒される。
しかも、赤いし。
宇宙ステーションの下には、なんか東京自宅の近所にもありそうな雑木林的な庭園があり、これまた異様なミスマッチ。
モダン・アーキテクチャと、すすき。
なんかイイね。
かなり好きだ。
この宇宙ステーションは日本の電通本社も手がけているジャン・ヌーヴェル Jean Nouvelさんの作。庭園はアーチストのジル・クレモン Gilles Clémentさんが担当したそうな。さらに、先ほど紹介した「生きた壁」は美術家で造園家のパトリック・ブラン Patrick Blancさんの作品。
ケ・ブランリは非ヨーロッパ世界から集めた美術品・民具・衣服・装飾品などなどを収蔵する、いわばエスニック美術の殿堂。オリエンタリズム美術館。
常設展示は、
こんなのや、
こんなのが(怖カワイイ)。
このときの目玉の企画展は、「マヤ文明展」だった。
え?上野でもやってた?みたいな気もしつつ、マヤ文明はパリでも大大大人気の長蛇の列で入場規制。こちらは諦めることに。
館内をみわたせば、民俗学探検記の金字塔『悲しき熱帯』の著者であり、フランス構造主義の始祖、南米やアジア、アフリカという非ヨーロッパ世界に目を向けたフランスの知性を代表するクロード・レヴィ=ストロースの名を冠した劇場などもあったりする。
蛇足ですが、(よ)はレヴィ=ストロースさんとおんなじ誕生日(これが言いたかっただけ・笑)。
wikiのケ・ブランリの項を読むと、美術品か、否、民俗学的資料か、という問題で美術館サイドと各国当事者が揉めたりしている事例もあるらしい。ふむ。こういうジャンルは、オリエンタリズムというか、いわゆるひとつの植民地主義的なあれこれもからんでくるわけで、言ってみればヨーロッパと非ヨーロッパの、ある部分の関係性をじっくりと味わえてしまう場所でもあって、日本人としてはかすかに微妙な気分もする。が、こういうジャンルにおいて、フランスというのは、もう不動の存在感とセンスと思い入れがあるのだなあ、と、あらためて感じ入ったりもする。
異国の文化へのイマジネーションの豊かさ。
食の分野でも、同じですよね。
しかし、なるほどフォトケが非ヨーロッパ写真家ばかり集めるのも、非ヨーロッパの民俗学的品々を集めるケ・ブランリのコンセプトを現代写真に敷衍したものなんだと、いまさら気づく。
さて。
じつはケ・ブランリには「レゾンブル」というステキそうなレストランがあって、チェックしたかったんだけれども、さっきエッフェル塔でランチしたばっかりなので、泣く泣くパス。
かわりにカフェで、
イル・フロッタント。
これを食べながら、ディナーの予約の電話をしてみる。
きさくなビストロなのに皿がガストロノミー(ビストロノミー?)ということでサンペレグリノの世界のベストレストラン50の9位に入っちゃった!と話題のシャトーブリアン Le Chateaubriandにダメ元で電話(2012年は15位に転落)。当然満席。並びの姉妹店ル・ドーファン Restaurant le Dauphinはバルっぽい感覚なので並べば入れてくれるみたいな話も聞くけど、どーなのか。
※まったく関係ありませんが、この記事を書くためにThe World's 50 Best RestaurantsのHPをチェックしてたら、(よ)のお気に入りバンコクの「ナーム」が、50位にニューエントリーしちゃってるではないですか!
話は戻って、写真展。
ケ・ブランリの庭をふたたび彷徨う。
Minstrel Kuikさん(マレーシア)。
マレーシア中国社会をとりまく、人、もの、色、空気。
チャイニーズ・マレーシアンのホンマタカシか佐内正史?
アフリカはトーゴの作家、Hélène Amouzouさん。
モノクロームの人物が、亡霊のようにゆらいでいる。
美術館の庭を出て、向かいは、
セーヌ川のほとり。
ここでもフォトケ、開催中。
印象的だったのは、
これ。
右のモノクロームは、日本の岡原功祐さん作。
リストカットなど自傷とともに生きる、現代日本の若者たちの居場所。
左はコロンビアのJulián Linerosさんの作品。
コロンビアの自警団AUCの過酷すぎる訓練風景。その団員たちは、コロンビアの貧困地域からリクルートされてきた若者たちだという。
日本とコロンビアの、こうも異なる、若者たちのリアルな現実。
ま、偶然展示場所が隣り合っただけかもしれないし、「こうも異なる」なんてのは観覧者の勝手な叙情性にもとづく解釈なわけですが。
そのほか、インド人作家の楽しい作品。
インスタント証明写真ボックスのようなブースで自分の顔を撮影して、
これらの写真に自分の顔をはめ込む、参加型インスタレーション。
もうひとつ気になったのは、
左に見える写真、
これ、台湾綜芸団とかタイワニーズ・キャバレーとか呼ばれる、台湾の移動型ショーのステージ。
このデコ感覚と猥雑さ。まさに台湾。大好きなイメージ。台湾の沈昭良さんの作品。
これ、面白い。
音楽が異様にダサいトランスなのは(笑)、たぶん移動タイワニーズ・キャバレーでかかるような音楽、ということなのではないか、と想像。
ふと台湾つながりで、台湾のデコなビンロウ屋とビンロウ美女ばかりを撮影した、瀬戸正人さんの大好きな作品「binran」を思い出したのだけれど、フォトケのセーヌ川売店で写真集『binran』を売っていてビックリ! 以前出展したことがあるのかもしれない。
この日はかなり暑くて、野外写真展をじっくり鑑賞していたら、日に焼けてしまった。
つづく。
(よ)
<2011年9月>
#18のつづき。
イラクの写真家の作品。
サダム・フセインという名の、匿名性。
ランチのあとは、エッフェル塔の第一展望台を観光。
興味深い野外写真展が開催されていた。
いろんな国の写真家が、作品を出展している。
この写真展、エッフェル塔の近所にあるケ・ブランリ美術館 Musée du quai Branlyが隔年で開催している「フォトケ PHOTOQUAI」なる企画展。
今回のPHOTOQUAI 2011には、世界から46人もの写真家が作品を出展。写真家は全員、ヨーロッパ以外の人たち。写真展会場はすべて屋外で、ここエッフェル塔ほか、ケ・ブランリ美術館の庭、そしてセーヌ川沿いの遊歩道でも展開されている。
近所だし、さっそくケ・ブランリ美術館 Musée du quai Branlyへ行ってみることに。
徒歩数分。いきなり目に入ってくるのは、
壁に生きた植物が生い茂った、不思議な美術館の建物。
観光客にも大人気。
そして、
入り口はたくさんのテキストが書かれたガラスの壁で、向こうが透過して見える。
さらに中に入ると、
宇宙船のような、宇宙ステーションのような、大胆な建築に圧倒される。
しかも、赤いし。
宇宙ステーションの下には、なんか東京自宅の近所にもありそうな雑木林的な庭園があり、これまた異様なミスマッチ。
モダン・アーキテクチャと、すすき。
なんかイイね。
かなり好きだ。
この宇宙ステーションは日本の電通本社も手がけているジャン・ヌーヴェル Jean Nouvelさんの作。庭園はアーチストのジル・クレモン Gilles Clémentさんが担当したそうな。さらに、先ほど紹介した「生きた壁」は美術家で造園家のパトリック・ブラン Patrick Blancさんの作品。
ケ・ブランリは非ヨーロッパ世界から集めた美術品・民具・衣服・装飾品などなどを収蔵する、いわばエスニック美術の殿堂。オリエンタリズム美術館。
常設展示は、
こんなのや、
こんなのが(怖カワイイ)。
このときの目玉の企画展は、「マヤ文明展」だった。
え?上野でもやってた?みたいな気もしつつ、マヤ文明はパリでも大大大人気の長蛇の列で入場規制。こちらは諦めることに。
館内をみわたせば、民俗学探検記の金字塔『悲しき熱帯』の著者であり、フランス構造主義の始祖、南米やアジア、アフリカという非ヨーロッパ世界に目を向けたフランスの知性を代表するクロード・レヴィ=ストロースの名を冠した劇場などもあったりする。
蛇足ですが、(よ)はレヴィ=ストロースさんとおんなじ誕生日(これが言いたかっただけ・笑)。
wikiのケ・ブランリの項を読むと、美術品か、否、民俗学的資料か、という問題で美術館サイドと各国当事者が揉めたりしている事例もあるらしい。ふむ。こういうジャンルは、オリエンタリズムというか、いわゆるひとつの植民地主義的なあれこれもからんでくるわけで、言ってみればヨーロッパと非ヨーロッパの、ある部分の関係性をじっくりと味わえてしまう場所でもあって、日本人としてはかすかに微妙な気分もする。が、こういうジャンルにおいて、フランスというのは、もう不動の存在感とセンスと思い入れがあるのだなあ、と、あらためて感じ入ったりもする。
異国の文化へのイマジネーションの豊かさ。
食の分野でも、同じですよね。
しかし、なるほどフォトケが非ヨーロッパ写真家ばかり集めるのも、非ヨーロッパの民俗学的品々を集めるケ・ブランリのコンセプトを現代写真に敷衍したものなんだと、いまさら気づく。
さて。
じつはケ・ブランリには「レゾンブル」というステキそうなレストランがあって、チェックしたかったんだけれども、さっきエッフェル塔でランチしたばっかりなので、泣く泣くパス。
かわりにカフェで、
イル・フロッタント。
これを食べながら、ディナーの予約の電話をしてみる。
きさくなビストロなのに皿がガストロノミー(ビストロノミー?)ということでサンペレグリノの世界のベストレストラン50の9位に入っちゃった!と話題のシャトーブリアン Le Chateaubriandにダメ元で電話(2012年は15位に転落)。当然満席。並びの姉妹店ル・ドーファン Restaurant le Dauphinはバルっぽい感覚なので並べば入れてくれるみたいな話も聞くけど、どーなのか。
※まったく関係ありませんが、この記事を書くためにThe World's 50 Best RestaurantsのHPをチェックしてたら、(よ)のお気に入りバンコクの「ナーム」が、50位にニューエントリーしちゃってるではないですか!
話は戻って、写真展。
ケ・ブランリの庭をふたたび彷徨う。
Minstrel Kuikさん(マレーシア)。
マレーシア中国社会をとりまく、人、もの、色、空気。
チャイニーズ・マレーシアンのホンマタカシか佐内正史?
アフリカはトーゴの作家、Hélène Amouzouさん。
モノクロームの人物が、亡霊のようにゆらいでいる。
美術館の庭を出て、向かいは、
セーヌ川のほとり。
ここでもフォトケ、開催中。
印象的だったのは、
これ。
右のモノクロームは、日本の岡原功祐さん作。
リストカットなど自傷とともに生きる、現代日本の若者たちの居場所。
左はコロンビアのJulián Linerosさんの作品。
コロンビアの自警団AUCの過酷すぎる訓練風景。その団員たちは、コロンビアの貧困地域からリクルートされてきた若者たちだという。
日本とコロンビアの、こうも異なる、若者たちのリアルな現実。
ま、偶然展示場所が隣り合っただけかもしれないし、「こうも異なる」なんてのは観覧者の勝手な叙情性にもとづく解釈なわけですが。
そのほか、インド人作家の楽しい作品。
インスタント証明写真ボックスのようなブースで自分の顔を撮影して、
これらの写真に自分の顔をはめ込む、参加型インスタレーション。
もうひとつ気になったのは、
左に見える写真、
これ、台湾綜芸団とかタイワニーズ・キャバレーとか呼ばれる、台湾の移動型ショーのステージ。
このデコ感覚と猥雑さ。まさに台湾。大好きなイメージ。台湾の沈昭良さんの作品。
これ、面白い。
音楽が異様にダサいトランスなのは(笑)、たぶん移動タイワニーズ・キャバレーでかかるような音楽、ということなのではないか、と想像。
ふと台湾つながりで、台湾のデコなビンロウ屋とビンロウ美女ばかりを撮影した、瀬戸正人さんの大好きな作品「binran」を思い出したのだけれど、フォトケのセーヌ川売店で写真集『binran』を売っていてビックリ! 以前出展したことがあるのかもしれない。
この日はかなり暑くて、野外写真展をじっくり鑑賞していたら、日に焼けてしまった。
つづく。
(よ)
<2011年9月>
by brd
| 2012-08-19 13:31
| フランス
旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks
by brd
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