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パリ : 菜園の平穏/鱗と羽根の欲望 「アルページュ l'Arpège」

~KL-Paris-Quimper #08~

前回の続き。

テーブルには、花のかわりに、コロンとした野菜が。

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かぼちゃの類だろうか。

奇抜だけれど、ほっとする。

王道は行かないアーティスティックさと、料理や食材に対する真摯さ。そんなイメージも受ける。

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待望の、「アルページュ l'Arpège」にやって来た。

1ヶ月前くらいに東京から電話を入れたら、すんなり席はとれた。おなじ時期に、「アストランス l'Astrance」にも連絡したが、さすがにこちらは満席。3日前にコンファームしてくださいと言われたので、KLからかけた。

Dejeuner des jardins.

「菜園の昼食」なるランチコースと、グラスのシャンパーニュをたのむ。

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アミューズ。

なんともかわいらしい、どれも野菜のクリームが主となる、ひとくちの楽しみ。

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塩気のつよい、濃い黄色をしたブルターニュのバターが美味しくて、料理が出るまえに、ついパンをつまみすぎてしまう。

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マスタードのアイスクリームをそえた、ガスパッチョ。

やや沈んだ赤の色のとおり、爽やか、というよりは濃厚。スパイシー。

ソムリエに白ワインをたのむ。

Meursault 2008 Matrot

ソムリエの彼、とても日本語が達者だ。

最初、フランス語でペラペラっと話しかけてきて、こちらが困った顔をしたら、「あ、日本人ですかー?」だって。おいおい。聞けば彼もフランス人ではなく、ローマ出身のイタリア人。奥さんが日本人だそうな。イタリアといえば、以前、ウンブリア州を旅行したときに寄った某店がすごく良かった、と話したら同意してくれた。ミラノの話もしたけれど、ミラノはあまり好きではないみたい。

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看板料理ともいわれる、半熟卵。

卵の殻の横に、BIO・・・赤い判が押してある。すごくなめらかなクリームの下に半熟卵が隠れてる。

ヨーロッパ人たちにとって、きっとこれは「懐かしフード」のオトナ版、洗練版なのかも。そういえば、子供のころディック・ブルーナの絵本に描かれていた、卵立てと半熟卵に興味を持ったことを思い出す。そのとき実物は知らなかった。そんなこんなが頭の片隅に残ったか、この翌日、ブレストのブロカントで使うかどうかわからない卵立てをいくつも買ってしまった

な~んて、自分なりに半熟卵の記憶をたぐりよせてみたり。

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Tomate naturelles

種類のことなるトマトたち。

メニューにある

golden rush, blanche arpege, noire de Russie, green zebra...

は、トマトの品種かな。

ラズベリーが添えられ、削ったチーズが散らしてある。ソースの褐色はバルサミコでなく、たぶん醤油。気になって「アルページュ 醤油」で検索すると、香川の「丸島醤油」がアルページュに採用になった、という話が出てくる。

ソムリエの彼にたずねたら、「醤油、使っています」とのことだった。

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たまねぎのグラティネ。

メニューには、こう記載されている。

Couleur, saveur, parfum et dessin du jardin
cueillette ephemere

菜園の色彩、味覚、香り、そしてデザイン
束の間の収穫

フランス語はまったくわからないけど、Google翻訳などを使って多少リライトなどもしてみた。料理法や食材への言及がひとつもない。料理名というより、もうこれは詩なのか。

おそらくチーズなどとともに、たまねぎを器にはりつけるように薄く焼いてある。これを、こそぎ取るようにして食べる。

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Mesclun de Sylvain an praline de noisette a l'ancienne
mizuna, moutarde melisse, choho, courgette floridor...

ヘーゼルナッツ・プラリネのメスクラン。

3つ星なのに、一品の料理として葉もののサラダが出るとは、さすが野菜料理のアルページュ。

パリ : 菜園の平穏/鱗と羽根の欲望 「アルページュ l\'Arpège」 _e0152073_2222241.jpg

Fines ravioles potageres fleuries aux herbes fines
oignon blanc aviv, chou noriko, basilic osmin pourpre, concombre lemon...

トマトのコンソメに浮かんだ、4種類の野菜のラビオリ。

このトマトのコンソメが美味しかった。トマトだけじゃなく、バジルやミントだろうかハーブの香りもふくまれている。舌触りのさらっとしたコンソメに、野菜の濃~いエッセンスがぎゅっと凝縮。

さらにラビオリの中身が驚き。口のなかで皮がやぶけて、つめものがコンソメと混ざる一瞬が、ほんとうに楽しい。

台北の小籠湯包は、スープのたっぷり入ったミニ小籠包が、さらに別のスープに浮いていて、レンゲですくっていただくと、ミニ小籠包の中のスープと、小籠包が浮いていたスープが口内で出会う仕組みになっていた。そんな料理を思い出したり。

話をラビオリに戻すと、偶然食べた順番がよかった。最後のふたつが、とくに驚いたから。なんだか、それぞれニンニクとニラのイメージがうかぶ強めの香味。やはり中華的。メニューにあるoignon blanc avivとbasilic osmin pourpreだろうか。

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Robe des champs <<Arlequin>> a l'huile d'argan
poivron doux des Landes, aubergine barbentane, carotte white satine...

クスクスを換骨奪胎した一皿。

野菜に、クスクス。泡は抹茶? 皿のいちばん向うにあるのはふつうのソーセージではなく、なんと「アリッサ」の入った野菜のソーセージ。アリッサは、クスクスを食べるときに必須の調味料。うちでも唐辛子、オリーブ油、にんにく、クミンなどで自作する。

メインのまえに、赤ワインをたのむ。

Fixin E.GEANTET 2006

メニューにあった、メイン料理と思われる記述。

Ecailles ou plumes
reflet de la gourmandise

鱗と羽根
欲望の投影

by Google翻訳+雰囲気リライト

「鱗と羽根」って、つまり、魚と鶏ということか。

魚は

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あんこう。

でかい!

手ぶれ残念。

でも、あんこうは鱗ないけど。

そのかわり、なんか鱗のような格子の焼き目がついてる。

鶏は、

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無花果の葉に包んで焼いてある。

すごく、いい色をしてる。

あんこうは、白ワインのソースで食べるか、抹茶か訊ねられたので、抹茶にした。

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抹茶はソースではなく、あんこうの上に抹茶そのものがふりかけられているみたいだった。

お皿の左上あたり。ローストしたタマネギと白いクネルの間にある黒っぽい野菜が酸っぱくて、とてもよいアクセントになっていた。あんこうの淡白でしっかりした白身を、つけあわせの役割を逸脱した(良い意味で)個性のきわだつ野菜たちがとりかこんでいるイメージ。

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鶏のほうの皿。

食事をふりかえってみると、半熟卵と、バターやクリームなどの乳製品以外、メインまで動物由来の食材ってゼロだったんじゃないか?

禁欲的とも思える野菜の連続のあとの、人間の欲望にうったえる鱗や、羽根をまとった生き物の肉。

菜園の平穏、鱗と羽根の欲望。

そんな解釈もしてみたくなる。

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Fromages Bernard Antony
affineur

ベルナール・アントニーのフロマージュ。

ベルナールさんとは、アルザスのチーズ熟成師だそう。シェーブルなどを中心にいただく。

突然、隣のテーブルで食事をしていたフランス人のカップルが「日本人ですか?写真を撮ってあげましょう」と、話しかけてきた。聞けば、今日は結婚2周年のお祝いで来たのだそうだ。せっかくなので、女性のほうが持っていたiPhoneで、彼らの写真も撮ってあげた。「おめでとう」と言うと、「ありがと」と日本語で応えてくれた。

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小菓子。

手前のバラのような、小さなリンゴのタルトが美味しい。

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Douceur des potagers
friandises

ルバーブのコンフィの入ったミルフィーユ。

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カフェ。

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ハーブティ。

ちょうど今、シェフのアラン・パッサールさんが「ニッシム・ドゥ・カモンド美術館」でコラージュ展を開催している。

あるとき、シェフがさらさらと描いていたミルフィーユの絵がとても繊細で、口に入れて一瞬でくずれてしまうようなパイ生地のはかなさをうまく表現していた。パッサールさんに師事した狐野扶実子さんが、たしかどっかに、こんな感じの話を書いていたはず。

コラージュ展、観たかったなあ。会期がちょうど1ヵ月おそければ。

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お昼どきも、もうおわり。

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店を出て少し歩いたら、あずけたジャケットを返してくれてないことに気づいて、戻った。なんか、夢から覚めた感じだった。

つづく。

(よ)

※2011年9月

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by brd | 2011-10-25 22:49 | フランス


旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks


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