パリ : 週末夜のビストロタイム「ル・コントワール・デュ・ルレ Le Comptoir du Relais」
~KL-Paris-Quimper #06~
前回の続き。
パリの果て20区から、パリ中心部へ帰還。
メトロ・オデオン駅で下車。
今夜のディナー候補のビストロ、「ル・コントワール・デュ・ルレ Le Comptoir du Relais」を下見することに。
ここは、現在のパリの料理界を象徴するネオビストロ、もしくはビストロノミーなる潮流の象徴といわれるイヴ・カンドボルドさんの店。Hôtel Relais Saint Germainの1階にあり、向って左隣には姉妹店である「ラヴァン・コントワール l'avant comptoir」が。こちらは立ち飲み形式で、クレープや、「オードブル」と呼ばれる小皿のタパスを供する、いわゆる「バル」的な店らしい。
さて、今夜のディナーについて、「ル・コントワール・デュ・ルレ」の人に聞いてみた。
いわく、予約は取らないので、直接来てください、とのこと。
「ル・コントワール・デュ・ルレ」の営業スタイルは、ちょっと変則的。平日の夜は完全予約制のフルコースの創作料理が供され、平日の昼と、週末や祝日の終日がビストロスタイルの営業になる。
完全予約のフルコースは、かなり先まで予約いっぱい。残念。でも、今日のような週末の夜も楽しそうじゃないか。
「ル・コントワール・デュ・ルレ」の界隈。イタリアンや、ラム酒専門らしき店など、なかなか楽しい。
さて。
オデオン界隈からサン・ジェルマン大通りを歩く。
ホテルへは、レンヌ通りにさしかかったら左へ折れればいい。
と思っていたら、気になるショコラティエを発見。
「La Maison Georges Larnicol ジョルジュ・ラルニコル」
ショコラが量り売り。
このキャラメル・ペーストが、本当に美味しくって、お土産に買ったのに旅行中にひと瓶なめ尽くしてしまったほど。
あとから調べて知ったことだけど、ここ、フランス・ブルターニュ地方カンペール発祥のショコラティエらしく、明後日からカンペールに旅しようとしてる(よ)にとっては、うてっつけの店だった。店の主、ラルニコルさんはMOF(国家最優秀職人章)の称号を持ち、サン・ジェルマン通りには昨年末に店を出したばかりだそうな。
道端のコンフィズリー(駄菓子)屋台。
ホテルの近くの雑貨屋にあった、ジロール茸。
こちらはセップ茸。
そのほか葡萄や、胡桃、ホワイトアスパラ、グリーンアスパラなどなど。
ホテルでひと寝入り。
そして。
再出動。
リュクサンブール宮殿を横目にチラ見しつつ、脚はオデオン界隈へと急ぐ。
21時ごろ、現地着。
うっわ~。並んでる!
フランス人も行列ってするんだね!
ふだん東京でラーメン屋の行列など見ると、どうにも苦々しく、並んでやるものか、とか思ったりする(よ)ではあるが、どうにも今日ばかりは、おとなしく列に加わる。
と、思ったら、われわれの前に並んでいるのは日本人だった。そして、われわれのあとについたのも、また日本人。
なーんか列に日本人が多くなって気恥ずかしい感じがする。まあいいけど。
すでに席についているなかにも、日本人と思しき客が幾人か。観光客と思える団体もいれば、フランス語ペラペラで、おそらくパリで働いているのだろう日本人もいる。ようは、パリに日本人が多いのだ。
飲食店の厨房にも日本人が多いし、ミシュランスターを勝ち取った若い日本人シェフだっている。
となりの「ラヴァン・コントワール」からも、日本語の歓声が。
こう書くと、全員日本人のようだけど、もちろん集まっている大半は味と流行に敏感なフランスのグルメ老若男女たちなので、誤解なきよう。
行列していると、なんとなく真向かいに目が行く。
そこにはカフェ「Les Editeurs レ・ゼディトゥール」が。
「編集者」の名のごとく、本がいっぱいあったり、文豪の写真が飾ってあったり、どうも文学にちなんだ店っぽい。あとから調べたら、ここ主催の「les editeurs賞」なる文学賞もあるらしい。コントワールの行列がどうしても待てない場合は、駆け込み寺的存在でもあるらしいが、某誌ウェブ版の記事によれば、味的に「ここはどうも…」という声が多いとか。ほう。
40分くらいならんで、22時近くなり、やっと入店。
ママ・シェルターのブランチで(ゆ)が調子に乗って食べ過ぎ、まだ腹が完全にへらないらしく「ちょっと軽い感じがイイ」なんぞ抜かすので、「ル・ペール・ジュル」のシードルを頼んでみた。
豚がかわいい。
ブーダンノワールのテリーヌとリンゴのサラダ。
ブーダンノワールには、血だけじゃなく肉や内臓の食感も。クドくなく、かつ食べ応えのあるテリーヌ。普通、ブーダンノワールにはコンポートなど煮たフルーツがつけ合せになることが多いけれど、フレッシュなリンゴも面白い。こういうのを食べていると、ちょっとシードルだともの足りない。
温かいオマールのビスク。タピオカらしきものが入ってる。
腹が減らない、などと言っときながら、隣のフランス人4人組のテーブルを見て、(ゆ)が頼んだフォアグラ・トースト。
その隣の4人組は、まずサラミやテリーヌなどのシャルキュトリー盛り合わせを頼んで全員でシェアしてから、前菜、メインと進んでいた。いいかも。
軽め、ということで(ゆ)が頼んだハムやアーティチョークの盛り合わせだが、うーむ、ドドンと十分なボリュームあり。
Carre d'agneau.
仔羊のあばら肉。
一緒に赤ワインも。
肉の焼き加減は、ナイフを入れると、じわっと血がしたたるレア。ラムの美味しい感じに焼けている。肉の下にしいてある赤ピーマンににんにくがきいてる。上に柑橘のピールが散らしてある。
席は、テラスではなく店内ちょうど真ん中あたり。よって、地下の厨房から容赦なくガンガン上がってくる料理を、3人のサービスがものすごい勢いで配膳している様子が余すところなく観察できた。
年配の女性の客のさばき方も達者でひと味あるけれど、われわれのテーブルについた黒人の女の子も、すごい運動神経だ。忙しくなると、飛び回りすぎて、やることがちょっと雑になってくる。けれど、それで店のどこかに鼻をぶつけて、痛くて動けなくなったりのアクシデントも、なにかちょっとした演出のような感じで店の雰囲気になじんでしまう。痛がっているのに悪いけど、なんか面白かった。
ババ・オ・ラム。
写真だとよくわからないけど、けっこうデカい。
サーブ直前に目の前でラム酒を、ボトルからドバ~っとかけてくれるのが楽しい。
けっこう酔っ払うデザート。
カフェ。
まだまだ賑々しい、オデオンの夜なのであった。
つづく。
(よ)
※2011年9月
前回の続き。
パリの果て20区から、パリ中心部へ帰還。
メトロ・オデオン駅で下車。
今夜のディナー候補のビストロ、「ル・コントワール・デュ・ルレ Le Comptoir du Relais」を下見することに。
ここは、現在のパリの料理界を象徴するネオビストロ、もしくはビストロノミーなる潮流の象徴といわれるイヴ・カンドボルドさんの店。Hôtel Relais Saint Germainの1階にあり、向って左隣には姉妹店である「ラヴァン・コントワール l'avant comptoir」が。こちらは立ち飲み形式で、クレープや、「オードブル」と呼ばれる小皿のタパスを供する、いわゆる「バル」的な店らしい。
さて、今夜のディナーについて、「ル・コントワール・デュ・ルレ」の人に聞いてみた。
いわく、予約は取らないので、直接来てください、とのこと。
「ル・コントワール・デュ・ルレ」の営業スタイルは、ちょっと変則的。平日の夜は完全予約制のフルコースの創作料理が供され、平日の昼と、週末や祝日の終日がビストロスタイルの営業になる。
完全予約のフルコースは、かなり先まで予約いっぱい。残念。でも、今日のような週末の夜も楽しそうじゃないか。
「ル・コントワール・デュ・ルレ」の界隈。イタリアンや、ラム酒専門らしき店など、なかなか楽しい。
さて。
オデオン界隈からサン・ジェルマン大通りを歩く。
ホテルへは、レンヌ通りにさしかかったら左へ折れればいい。
と思っていたら、気になるショコラティエを発見。
「La Maison Georges Larnicol ジョルジュ・ラルニコル」
ショコラが量り売り。
このキャラメル・ペーストが、本当に美味しくって、お土産に買ったのに旅行中にひと瓶なめ尽くしてしまったほど。
あとから調べて知ったことだけど、ここ、フランス・ブルターニュ地方カンペール発祥のショコラティエらしく、明後日からカンペールに旅しようとしてる(よ)にとっては、うてっつけの店だった。店の主、ラルニコルさんはMOF(国家最優秀職人章)の称号を持ち、サン・ジェルマン通りには昨年末に店を出したばかりだそうな。
道端のコンフィズリー(駄菓子)屋台。
ホテルの近くの雑貨屋にあった、ジロール茸。
こちらはセップ茸。
そのほか葡萄や、胡桃、ホワイトアスパラ、グリーンアスパラなどなど。
ホテルでひと寝入り。
そして。
再出動。
リュクサンブール宮殿を横目にチラ見しつつ、脚はオデオン界隈へと急ぐ。
21時ごろ、現地着。
うっわ~。並んでる!
フランス人も行列ってするんだね!
ふだん東京でラーメン屋の行列など見ると、どうにも苦々しく、並んでやるものか、とか思ったりする(よ)ではあるが、どうにも今日ばかりは、おとなしく列に加わる。
と、思ったら、われわれの前に並んでいるのは日本人だった。そして、われわれのあとについたのも、また日本人。
なーんか列に日本人が多くなって気恥ずかしい感じがする。まあいいけど。
すでに席についているなかにも、日本人と思しき客が幾人か。観光客と思える団体もいれば、フランス語ペラペラで、おそらくパリで働いているのだろう日本人もいる。ようは、パリに日本人が多いのだ。
飲食店の厨房にも日本人が多いし、ミシュランスターを勝ち取った若い日本人シェフだっている。
となりの「ラヴァン・コントワール」からも、日本語の歓声が。
こう書くと、全員日本人のようだけど、もちろん集まっている大半は味と流行に敏感なフランスのグルメ老若男女たちなので、誤解なきよう。
行列していると、なんとなく真向かいに目が行く。
そこにはカフェ「Les Editeurs レ・ゼディトゥール」が。
「編集者」の名のごとく、本がいっぱいあったり、文豪の写真が飾ってあったり、どうも文学にちなんだ店っぽい。あとから調べたら、ここ主催の「les editeurs賞」なる文学賞もあるらしい。コントワールの行列がどうしても待てない場合は、駆け込み寺的存在でもあるらしいが、某誌ウェブ版の記事によれば、味的に「ここはどうも…」という声が多いとか。ほう。
40分くらいならんで、22時近くなり、やっと入店。
ママ・シェルターのブランチで(ゆ)が調子に乗って食べ過ぎ、まだ腹が完全にへらないらしく「ちょっと軽い感じがイイ」なんぞ抜かすので、「ル・ペール・ジュル」のシードルを頼んでみた。
豚がかわいい。
ブーダンノワールのテリーヌとリンゴのサラダ。
ブーダンノワールには、血だけじゃなく肉や内臓の食感も。クドくなく、かつ食べ応えのあるテリーヌ。普通、ブーダンノワールにはコンポートなど煮たフルーツがつけ合せになることが多いけれど、フレッシュなリンゴも面白い。こういうのを食べていると、ちょっとシードルだともの足りない。
温かいオマールのビスク。タピオカらしきものが入ってる。
腹が減らない、などと言っときながら、隣のフランス人4人組のテーブルを見て、(ゆ)が頼んだフォアグラ・トースト。
その隣の4人組は、まずサラミやテリーヌなどのシャルキュトリー盛り合わせを頼んで全員でシェアしてから、前菜、メインと進んでいた。いいかも。
軽め、ということで(ゆ)が頼んだハムやアーティチョークの盛り合わせだが、うーむ、ドドンと十分なボリュームあり。
Carre d'agneau.
仔羊のあばら肉。
一緒に赤ワインも。
肉の焼き加減は、ナイフを入れると、じわっと血がしたたるレア。ラムの美味しい感じに焼けている。肉の下にしいてある赤ピーマンににんにくがきいてる。上に柑橘のピールが散らしてある。
席は、テラスではなく店内ちょうど真ん中あたり。よって、地下の厨房から容赦なくガンガン上がってくる料理を、3人のサービスがものすごい勢いで配膳している様子が余すところなく観察できた。
年配の女性の客のさばき方も達者でひと味あるけれど、われわれのテーブルについた黒人の女の子も、すごい運動神経だ。忙しくなると、飛び回りすぎて、やることがちょっと雑になってくる。けれど、それで店のどこかに鼻をぶつけて、痛くて動けなくなったりのアクシデントも、なにかちょっとした演出のような感じで店の雰囲気になじんでしまう。痛がっているのに悪いけど、なんか面白かった。
ババ・オ・ラム。
写真だとよくわからないけど、けっこうデカい。
サーブ直前に目の前でラム酒を、ボトルからドバ~っとかけてくれるのが楽しい。
けっこう酔っ払うデザート。
カフェ。
まだまだ賑々しい、オデオンの夜なのであった。
つづく。
(よ)
※2011年9月
by brd
| 2011-10-18 02:30
| フランス
旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』発売中。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks
by brd
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
カテゴリ
全体インド
フランス
マレーシア
タイ
ミャンマー
中国
香港
ベトナム
韓国
東京のインド
東京のイタリア
東京の中国
東京のミャンマー
東京の韓国
東京のウイグル
東京のフランス
東京のタイ
東京のベトナム
東京のマレーシア
東京のネパール
東京のドイツ
東京のスペイン
東京のイスラエル
東京のニュージーランド
神奈川の中国
神奈川のタイ
神奈川のイタリア
富山のパキスタン
東京
神奈川
愛知
京都
石川
富山
茨城
本や映画
おうちで世界旅行(レシピ)
弁当
シンガポール
デンマーク
秋田
アメリカ
台湾
神奈川のベトナム
フィンランド
未分類
ブログパーツ
本棚
『食は東南アジアにあり』
星野龍夫
森枝卓士
『食べもの記』
森枝卓士
『アジア菜食紀行』
森枝卓士
『考える胃袋』
石毛直道
森枝卓士
『ごちそうはバナナの葉の上に―南インド菜食料理紀行』
渡辺玲
『食は広州に在り』
邱永漢
『檀流クッキング』
檀一雄
『中国料理の迷宮』
勝見洋一
『中国庶民生活図引 食』
島尾伸三
潮田登久子
『食卓は学校である』
玉村豊男
『地球怪食紀行―「鋼の胃袋」世界を飛ぶ』
小泉 武夫
『世界屠畜紀行』
内澤旬子
『ソバ屋で憩う』
杉浦日向子と ソ連
『有元葉子の料理の基本』
有元葉子
『ル・マンジュ・トゥー 素描(デッサン)するフランス料理』
谷昇
『料理通信』
『Arche+』
アーチプラス
在タイ女性のための
日本語フリーペーパー
☆
料理通信
アンバサダーブログ
「ニッポン列島食だより」
に寄稿しています。
☆2013/03
江古田「HEM」のイベント
ベトナムおやつ屋台村
☆2012/05
カレー&スパイス伝道師
渡辺玲さんのプライベート・ディナー
☆2012/01
渋谷にあるブルターニュ
「クレープリー・ティ・ロランド」
☆2011/10
シャン料理「トーフー」は
高田馬場の新名物?
☆2011/08
信州食材meetsタイ料理!
「ヤム! ヤム! ソウルスープキッチン」
☆2011/07
震災後の「ソバ屋で憩う」
高田馬場「傘亭」
以前の記事
2019年 01月2017年 10月
2016年 12月
2016年 10月
2016年 07月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2009年 10月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月